【不安や迷いで奏法を崩してしまわない体系的方法】

楽器を演奏していて、弾き方や吹き方が分からなくなってしまい、できていたこともできなくなってしまう。

そういう経験をされたことがある方はかなり多いでしょう。
あるいは、その最中にいらっしゃる方もいるでしょう。

わたしももう何度も経験していますし、そのような状況で助けを求めてレッスンにいらっしゃる方と会うことも頻繁にあります。

こういった経験を通じて、

『不安や迷いで奏法を崩してしまわない体系的な方法』

が考えとしてまとまってきました。

その方法とは、

– – –
①確かな事柄と、検討中の事柄に意識する内容を分類する
②確かな事柄だけに意識を向けながら演奏する
③そこで気持ちや手応えが落ち着いてきたら、検討中の事柄の検討へと進む
④保証を求める思考は流す
– – –

と定めることができるように思います。

では、トランペット演奏を例にした場合、これが具体的にどのようなものかを説明します。

《①確かな事柄と、検討中の事柄に意識する内容を分類する》

楽器を演奏するとき、様々なことを意識したり、良くも悪くも気にしたりするものでしょう。

例えばトランペットだったら

◎息のこと
◎唇のこと
◎ベルの向きのこと
◎舌のこと
◎練習量や内容のこと

etc…ほかにもいろいろあるでしょう。

こうして多岐にわたる「頭の中にある考え事」を、

A『どう考えても、誰になんと言われようとも確かなこと』
B『何が正しいのか、どっちが良いのか、どうすべきなのかまだ分からないこと』

に分類します。

この『A』に該当するものがほんの1つや2つしか無かったとしても構いません。もちろん、たくさんあっても構いません。

《②確かな事柄だけに意識を向けながら演奏する》

奏法に迷いや不安があって調子を崩しているとき、崩しそうなときというのは、頭の中がとても忙しい状態です。

この状態に、まずとても効き目のあるステップが、上記の『A』分類のものだけのことを意識しながら演奏することです。

例えば、トランペット演奏において『マウスピースは口にくっついている必要がある』ということは確かだ、と思えたとしましょう。

どこにくっつけるか、
どれくらいくっつけるか、

など細かいところはまだ迷っているかもしれません。でもそれは『B』分類です。

まずは、意識的意図的に、『A』分類のものだけのことを意識しながら演奏します。

この例で言うと、ほかのいろんなことが気になるかもしれないけれど、『確かなこと』として『A』分類になったことだけに意識を向けるので、もし現時点であなたにとって確かなことが『マウスピースを口にくっつける』ことだけだとしたら、本当にそのことだけを意識しながら演奏します。

他に頭や心の中をよぎる、あるいは占める『ああすべきなんじゃないか、こうすべきなんじゃないか』という思考。

それらは止めようとする必要はありません。

でもそれらを真に受けてなんとなくやって見始めるところから、奏法が崩れるのです。

ですから、《わざと、意識して演奏する》内容を、『A』分類された事柄だけにするのです。

他のことに意識が行き、そのとき迷いや不安を感じているなら、それに気づいたところで、『A』分類の事柄を意識してください。心の中で唱える、読み上げる、紙に書いておいてそれを眺める、などなどやりやすい方法でそうしてください。

先程申し上げた通り、『A』分類の事柄の個数は少なくても多くても構いません。

これを数分やっていると、出てくる音の結果や手応えが良くても悪くても、不思議と心が鎮まり迷いや不安と距離が取れるようになってくる可能性がかなりあります。

まずはそこからです。

《③気持ちや手応えが落ち着いてきたら、検討中の事柄の検討へと進む》

ここまでやっていて、気持ちが落ち着いてきたら、そこで冷静にかつ創造的に『B』分類のことに取り組むことができます。

トランペットの例のつづきで、

『A』分類=マウスピースを口にくっつける
『B』分類=息の吐き加減は思いっきり?それとも穏やかに?

というのがあるとしましょう。

『B』分類のことは、本来、試して・検討して・比べて・選んで・使い分けていくような事柄です。

それが、どうして不安や迷いになるかというと、上記の

試す
検討する
比べる
選ぶ
使い分ける

というような作業をせずに、あるいはその途中で焦ってはやく答えを確定させようとしたり、あろうはずもない完璧や高すぎる期待を持っていたり、不完全な自分を許せないでいたりするからです。

こういった完璧主義や自己否定の問題はそれ自体、向き合うべき大きなテーマではありますが、ここでは完璧主義や自己否定そのものを『無くす
・和らげる』のアプローチではなく、『そっちに吸い寄せられない』道筋を説明していると理解してください。

『B』分類のことに取り組むときは、ベースとして『A』分類のことを継続して意識したうえで、『B』分類の事柄の比較検討をします。

例の続きで具体的に述べると、

– – –
試行1:
『A』分類=マウスピースを口にくっつけるということを意識しながら、『B』分類=息の吐き加減は思いっきりやろうと意識しながら演奏する

試行2:
『A』分類=マウスピースを口にくっつけるということを意識しながら、『B』分類=息の吐き加減は穏やかにやろうと意識しながら演奏する

判断:
両方やってみて、音や吹きごこちなどから総合的に、どっちを『A』分類に入れるか決めます。決まらない場合は、引き続き『B』分類にしておきます。『A』 に入れるまでは、結論を出さず、検討を重ねればよいのです。
– – –

このような性質の取り組み方をするのです。

ポイントは、

☑『A』分類の事柄を意識することを優先しつつ、その上に乗せるようにし『B』分類の事柄を意識する。

☑『A』分類に入れてあったことが『B』分類対象に移動して再検討することがあっても良いし、『B』分類のことを『A』分類に移動させることを焦る必要も急ぐ必要もない。A、Bに優劣はない。

ということです。

《④保証や完成を求める思考は流す》

ここまで述べてきたような作業は、非常に効果的ですが、地道であり、また断定的・確定的な性質が薄いと言えます。

また、常に『建設途中』の様相があります。

なので、

「これさえやっておけば大丈夫」
「本番で必ずうまくいくだろう」
「ひたすらやっていれば正しい吹き方になるだろう」

といった気持ちになりたい場合、その気持ちを満たす性質の取り組み方ではありません。

でも、上達をもたらし、不安や迷いから奏法を崩すようなことは大幅に減らせます。

不安や迷いを減らすのではなく、確実な成功をもたらすのでもなく、

繰り返しになりますが上達と奏法の崩れの予防や崩れからの回復の道筋をもたらすものなのです。

Basil Kritzer

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