先輩という存在は、後輩からすると頼もしくキラキラしたものです。
そんな先輩が、後輩にしてあげられる一番のことは、
《後輩が音楽に夢中になれるようにしてあげる》
ことにちがいありません。
たとえば次の3つのような方法があります。
【①】先輩のあなたの演奏が、最高の刺激になる!
ある、吹奏楽やっているひとなら誰もが知っている超有名な学校のOBから聞いた話があります。
その学校は、毎年のように全国大会に出場する超強豪校なのですが、実は初心者が多いのです。
そして、ほとんどの時間が個人練習に費やされて、
でも有名なコーチのレッスンをしょっちゅう受けられるような環境でもない。
・・・いったいどうやって、それでみんな吹けるようになるのでしょうか?
そのOBによると、『とにかく先輩がアイドル!』なんですって。
個人練習は、決まったメニューやルールがあるわけじゃなくて、みんなそれぞれ好きなように延々と練習しているらしいのです。
そのモチベーションは、
『あの先輩みたいに吹けるようになりたい』
『先輩が吹いてるあのフレーズ、カッコいい!自分もやりたい』
そういう動機で、みんな先輩のマネをしたり、自分のやりたいことを一生懸命やるらしいのです。
わたしも、中学・高校時代、上手な先輩が何人もいました。プロになって活躍している先輩も何人かいます。
そんな先輩たちがいたことが、わたしも音楽の道に進んだいちばん大きな要因だったと思います。
先輩のあなた自身が、自分のやりたい音楽を一生懸命、心を込めて演奏すること。
それが後輩にとって最高の刺激になります。
【②】先輩のあなたが、音楽の世界の案内人!
でも、自分の演奏に自信がなくてもだいじょうぶです。
あなたの好きな団体、演奏家、録音を後輩に教えてあげてください。
『推し仲間』を増やすような感じです(笑)
パート練習がはかどらないときや面倒なとき、
個人練習に疲れちゃったときなど、
後輩と一緒にいろんな演奏を聴くといいでしょう!
演奏会などにも一緒にでかけましょう。
わたしも、中学生のとき、先輩に『亡き王女のためのパヴァーヌって曲、ホルンすごいで』と言われて、へえ〜そうなんだ〜と思って楽器屋さんに行き、それが入っているCDを買いました。
家に帰って聴いてみると、もう衝撃でした!
本当に美しい音楽で、しかも冒頭に信じられないほど素敵なホルンソロがあるのです。
このとき買ったCDはカラヤンという偉大な指揮者とベルリン・フィルハーモニー管弦楽団という世界一のオーケストラによるものでした。
これも、わたしにとってはどんどん音楽の世界へ踏み込んでいく大きなきっかけのひとつでした。
【③】先輩のあなたが頑張る姿が、後輩の心に残る。
先輩のあなたが上手に演奏できなくても、
後輩はあなたを慕い、あなたを頼りにしています。
あなたが、あなたなりのベストを尽くしている姿がとっても励みになっているのです。
わたしは、一歳上の、別の楽器の先輩でとても仲良しの先輩Aさんがいました。
その楽器で、その先輩の同級生で、これまた仲良しの先輩Bさんがいて、Bさんはすっごく上手でした。
Aさんは、楽器を始めたのが遅かったのもあって、そのときあまり上手ではありませんでした。合奏でも時々迷惑かけちゃうことがありました。
でも、Aさんは非常に努力家でした。
・・・とはいってもAさんは楽器と練習が大好きだから、本人としては無理に頑張っているわけではなかったのですが。
でも、わたしはAさんがひたむきに頑張る姿にすごく感銘を受けて、その先輩に負けないように、そしてその先輩を応援するような気持ちもどこかで感じながら、同じくらい早く朝練に行くようになりました。
Aさんはいまも愛好家として楽器を続けていて、とても上手になっています。
努力を続けることの偉大さの具体的な実例として、いまでもよく思い出します。
Basil Kritzer