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ひとまえで音をだすときや、
演奏会の本番、
みんなで合奏するときなどに、
ドキドキしたり、息があがる感じがしてやりづらい、なんだか怖いなという気持ちになる。
そういうことを感じるのは、実はとてもふつうのことなのです。
1年間に100回以上、人前で演奏するプロ演奏家や、
有名なソリストのようなひとたちでもおなじです。
ですから、実はそのような緊張は、消そうとしたりおさえようとしたりしてもどうしても無理があって、
《その緊張感のなかで、しあわせに音楽をする》
ということを知っていくほうがうまくいく場合が多いでしょう。
【①】緊張を感じたら、どうするか
《その1》
まずは、感じている緊張感をどんどん言葉や動きにして吐き出していきましょう。
「あー緊張するー」
「あーこわいよー」
「うーん、ドキドキしていやだよー」
などなど、思っていることや感じていることを言葉にして声に出してください。
言葉だけでなく、体をブルブル動かしたり、ソワソワ歩き回ったり、ぐーっと体全体にちからを入れてから一気に脱力したり。
我慢せずに、外に出していきましょう。
《その2》
その1で、ちょっとじぶんを空っぽにしたら、『いま・ここ』のインプットをします。
・『目』で周りみます。部屋にあるモノ、いまいる場所の広さや形、色の種類など、なんでもどんどん、『目』で確認します。
・『耳』で、まわりにある音に気付きましょう。ひとの声、ひとが動く足音や服の音、空調の音、風の音などなど。いろんな音がしています。
・『肌』で感じます。まわりにあるものに触ったり、空気の温度を感じたり、空気が流れているのがわかるかもしれません。
・『におい・味』も感じましょう。空気になにかにおいがあるかもしれません。手にした水やお茶をのむと、味もあります。
《その3》
さいごに、自分が《好きなもの・ひと・こと》を思い出しましょう。好きなもの・ひと・リストを作ってください。
・好きなひとたち
・好きな場所
・好きな季節
・好きなたべもの
・好きなペット、動物
・好きな建物
・好きなキャラクター
・好きな活動
などなど。
そのリストを見ながら、
「〜がすき」
「〜がすき」
「〜もすき」
と、これも声に出していいます。
前向きな気持ちや、自分らしさを思い出せるようになります。
・・・この3つを順番にやりましょう。
【②】あなたのやるべきことは、「おはなし」をすること
いざ、人前や合奏のとき、あなたがする必要があることは、
「楽器の音で、おはなしをすること」
です。
曲は、小説や漫画の「おはなし」のようなものです。
あるいは、絵や彫刻のようなものでもあります。
楽器で演奏をするというのは、
言葉でおはなしをする、
絵の具で絵を描く、
セリフで演技をする、
のと同じです。
人前でやろうとするのはそういうことであって、
「失敗しないようにする」のではありません。
「迷惑をかけないようにする」のではありません。
「うまいところすごいところを見せてやろうとする」のでもありません。
うまくいっても、
うまくいかなくても、
楽器の音を使って、
「おはなし」しましょう
「絵を描き」ましょう
「セリフ」を魂をこめて言いましょう。
【③】失敗してもだいじょうぶ
うまく演奏できない、
失敗してしまう、
思い通りにできない。
そういうことって、あります。
でも、それでだいじょうなんです。
失敗しても、死なないでしょう?
失敗しても、だれも傷ついたりしません。
音楽をすることで、失敗があったり思い通りにできなくても、だれかに危害が迷惑がおよぶなんてことはありません。
まず、そこをよく自分に言い聞かせてあげてください。
お医者さんやパイロットは、ひとのいのちを預かっていますから、
ほんとうにミスできません。
でも、音楽はそういうものではないのです。
ミスしてだいじょうぶなのです。
・・・それでも、ミスをするのが嫌だ・気になる、というのであれば、
あなたは「演奏のじょうず・じょうずじゃない」を「あなた自身の存在価値」にくっつけてしまっているということです。
それも、できるだけ早く解消しましょう。
楽器の演奏がうまくいってもいかなくても、
あなたはこの世界にただひとりしかいません。
そして、楽器演奏がじょうずでもじょうずじゃなくても、誰かにとってあなたは大切な存在なのです。
楽器演奏は、よくよく考えれば、ほんの楽しみにすぎないのです。
うまくできるかどうか、
じょうずかどうか、
それは基本的に、日頃からの練習と長い年月の積み重ねで良くなっていくことです。
いまのあなたがどんなことができて、どんなことがまだ難しいとしても、音楽を演奏することは誰でもいつでも、目一杯味わって楽しんでよいことなのです。
ほんとうに、気をラクにして、思い切って演奏しましょう!
Basil Kritzer