あがり症を克服するためには、「自分というものの理解」が必要になる

あがり症に関してのわたしの理解は、時ともに変わって行っています。

最近特に思うのは、

『あがり症は、自分が間違った方向に進もうとしている「サイン」ではないか?』

ということです。

わたしは中学2年生であがり症を発症しました。以後、いまでもホルンを吹くときは「あがり気味」です。

しかし、あるときを境に、同じあがり症でも「どうにもならず壊滅的」だったのが、「なんとかできるもの」に変わりました。わたしが身につけ、教えてきた「あがり症対処法」の多くは、「なんとかなる」程度になってから学び吸収したテクニックです。

8年間もひどいあがり症に苦しみ、本番で滅茶苦茶な演奏をしてしまい、途中で演奏を止めることもしばしばだったわたしでも、ホルン奏者としてプロのオーケストラの仕事を頂いたり、数百人の前でソリストとして協奏曲を演奏することができるようになったのは、これらのテクニックのおかげです。

・アレクサンダー・テクニークの積極活用
・思考の毒抜き
・思考のプログラミング
・アドレナリン・サーフィング

といったものがそれです。

これらは、あがり症関連のセミナーで詳しく紹介します。

でも、根本的な転換点はそれらのテクニックを知る前にありました。

そもそも、中学2年であがり症になる前は、わたしは「本番に強い」人間でした。また、アレクサンダー・テクニーク教師になってからは、いくつもプレッシャーのかかる講座をやる抜いてきています。緊張の連続で、「あがり症」に襲われて頭が真っ白になってもおかしくないはずの状況でも、毎回しっかり切り抜けています(講座を教えるというのは、演奏に似た緊張感がありますから、上述したテクニックはいつも講座前も使っています)。

では、8年に及ぶ深刻なあがり症は何だったのか?

そしてそれの転換点は何だったのか?

詳しくは講座でお話しますが、深刻なあがり症は、わたしが「向いていた方向」が、自分という存在にとって間違っていたからだと考えています。

ズバッと言ってしまうと、わたしの深刻なあがりの根本的な原因は

『ダメな自分を打ち消すために、ホルン奏者として認めてもらいたい / 凄いと思われたい』

という気持ちにありました。

この気持ちひとつで、自らに厳しく練習を課し、実際にドイツの芸大に高卒すぐで入学して、5年間も勉強し、ホルン奏者としての研鑽を積むことができたのですから、悪いことばかりではありませんでしたが、この気持ちはあがり症の究極原因のひとつでもありました。

わたしは、ひとから「凄い」「かっこいい」と思われたいと思っていた一方で、「ホルン奏者」という生き方を本当にしたかったのかと言えば、そうではありません。

「凄い」「かっこいい」と『思われたい』という気持ちの裏には、「自分はひとに認めてもらえない存在だ」という深い感覚が根を生やしています。結局どこまで行っても「自分はダメ」ということを「打ち消すための」努力ですから、苦しみが伴います。

根本的に、ホルン奏者を目指しているわけではないのに、「自分はダメ」という感覚を消すために「ホルン奏者として認められる」ための努力をする。

このズレや齟齬が、「あがり症」を誘発していたのだと思います。

先ほど述べた「転換点」は、自分が本当のところではホルン奏者を目指しているわけではない/ホルン奏者という生き方にこだわっているわけではないことを自覚したときでした。

そのときから、ものすっごく緊張しても、なんとかそれなりの演奏はできるようになっていったのです。

いまでも時々、ひとまえで演奏をする機会があります。

嫌な緊張感とあがり症の気配に飲み込まれて、力を発揮できなかったり、納得がいかずに暗い気分で終わることもあります。

反対に、緊張しても、どこか根本的なところでは前向きに演奏が出来、ミスがあっても自分の良さが出せた感じがして「やってよかった」と感じて終われることもあります。

前者は、「ホルン奏者として認められたい」という気持ちが勝っているときです。

後者は、自分が何のためにホルンを吹いていたり、人前に立って演奏をしているのかの真実をより見据えられているときです。

セミナーでは参加者のみなさまが、『自分が本当に目指すべき方向』がチラリとでも感じられるように、様々な問いかけやエクササイズを用意して臨みます。それが分かることこそが、テクニック以前のあがり症克服の根本的サポートになると思うからです。

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あがり症を克服するためには、「自分というものの理解」が必要になる」への2件のフィードバック

  1. 人前で音楽を演奏するということは、こんなにも正直に自分のことを映してくれるんですね。私はアマチュアですがあがり症で、緊張というのはある意味病気みたいなものだと思うときもあります。ある心理学者(精神医学者)が症状というのは自身に対するメッセージだと言っていたのを思い出しました。

    • にっしーさま

      わたしも、すごくそういう面があると思います。
      心理カウンセリングとパフォーマンストレーニングの両方が役立つ可能性があって、ひとそれぞれ、時と場合によりどっちがどれぐらい必要かが変わってくるんだろうと思います。

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