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野球崩壊ー。
ショッキングなタイトルですが、著者のブログ『野球の記録で話したい』をもう7年ほど前から読み続けています。
記録から掘り下げる野球という競技の歴史の味わい深さと、数字から明らかになる選手の個性、実力の面白さ。
そんな著者が、昨年高知新聞が報じた若年者の野球離れをきっかけに野球界の現状をと未来を徹底的に考え論じたのがこの本です。
本を読んで浮き彫りになるのは、子供を中心とした野球離れの本質は『指導法』の問題にあるということ。
そして、そのような指導法を生み出しなお温存させるのが野球界のビジョンの問題。
そこに至った歴史的過程が根の深さと深刻さを印象付けます。
独立リーグの代表をはじめ、マーケティング・指導法・リーグ運営のビジョンなどをどうしていけばよいかを野球関係者の聡明な人物達に語らせ、また最後にJリーグ創設のキーマンであった川淵氏へのインタビューも掲載され、とても読み応えがありました。
….しかし、野球界の問題点として挙げられるポイントの多くは、実は吹奏楽、音楽の世界にもそのまま当てはまることがたくさんあり、グサッとくることばかりで苦しくなり何度か本を閉じて休まねばならないほどでした。
著者も述べていますが、実は野球界の問題は野球に限定されたことというよりは、野球の担い手たる「体育会系文化」にその根があるのではないかと感じさせられました。
そしてこの「体育会系文化」というものは、真に日本の伝統的文化であるとはは決して言えません。そこによい意味での深さは無いのですが、明治維新以降の日本の歩んだ道の上に積もり積もった「重み」のあるものではあります。影響はとても大きいのです。
最後に、「指導法」に関し印象的だった部分を引用します。
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<<慶應義塾大学名誉教授の池井優さんが語る>>
P.74~75
…アメリカには軟球はありません。子供でも硬球だから怖い。キャッチボールをしてもうまくできない。体から離れたところでこわごわボールを捕ります。コーチは「カモン!ボーイズ」と子どもたちを集める。そして腕時計を外して「もってろ」とひとりの子に投げる。子どもは両手で受ける。
「な、大事なものは両手で受けるだろ。ボールも両手で捕れよ」
「でも、ボールは痛いもん」
「じゃ痛くないボールでやろう」
新聞紙を丸めてテープで固めてボールを作ってキャッチボールをする。
「痛くないな?じゃテニスボールで」
「痛くないな?今度は硬球に」
そうすると15分くらいで、さっきまで硬球をこわがっていた子どもがキャッチボールをするようになる。
次はゴロ。みんなが怖がって顔が上がりボールが捕れない。するとコーチは「みんな、ならべ」と言う。
日本だったら、「お前たち、ボールが怖くて野球ができるか」とコーチが怒鳴って、選手たちは半べそをかいて捕らされるところです。でも、向こうのコーチは「お前ら、ボール怖いんだろ。だったら絶対に捕るなよ。ボールが来たら逃げろよ」と言う。
子どもたちはきゃーきゃー言いながら逃げまわります。
「よく逃げた、でもこのボールはお前たちに逃げてもらいたいのかな?捕ってもらいたいんじゃないかな?そうだ、捕ってもらいたがっているんだよ。だったら捕ってみよう」
そこで緩いゴロを打つ。
「よく捕った!ボールは捕ってもらえてうれしいんだ。お前たちに投げてもらえればもっとうれしいんだよ」
Basil Kritzer
お忙しいところ失礼いたします。
学校等で時々指導をしており、指導のためにネットにいろいろ調べていたところ、こういう記述がありました。
「あまり子供のころに肺に息を入れすぎると肺がつぶれる」と、
その引き合いにそれこそ少年野球のように投げすぎにより、肩がつぶれる例をあげてあったのですが、どうも釈然としません。
腕を使って投げるというのと、肺にたくさん息を入れるのいうのは全く別物だと思いますし、肺は常時使っているのになぜ?という考えもあります。
トンデモ科学だとは思いますが、万が一があってはいけないので、恐縮ではございますが、ぜひご教授願えればと存じます。
チューバ吹きさま
コメント有り難うございます。
「気胸」という症状は存在します。
その方が、それを指して言っていたのかは分かりませんが。
また、「気胸」が息の吸いすぎ、吸おうとしすぎで起きるのか、そのリスクが若年の方が高いのか、などわたしは知識を持っておりません。すみません。
肺がつぶれるかどうかは知りませんが、呼吸のトレーニングや負荷もまた、注意や配慮が必要であろうとは思います。
Basil Kritzer
ご返信いただきありがとうございます。
確かに「肺がつぶれる」というのは抽象的で、何を指しているかわかりませんね。問題が出てくるとしたら、実際の「気胸」などの病気として表れるということ言われ、頭の中がすっきりしました。(初歩的なことですみません)
先生が書かれていた記事を参考し、また頑張ろうと思います。誠にありがとうございました。