やってもやってもできなくて、楽しくなくて、辛い….どうしたらいいの?

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古楽器の演奏をされている Hさん からの質問です。

【質問者】

以前もこちらでご相談させて頂きました、H と申します。いつも大変勉強になる記事をありがとうございます。興味深く拝読しております。

さっそく質問なのですが、数ヶ月前、楽器を手に持った時点で身体が強張っていることに気付きました。おそらく、ある時点からずっとそうだったのだと思います。

それは、かなり前から演奏後のひどい心身の疲れを感じたり、楽器を持った時に呼吸がしにくくなっていたからです。

こんな状態では楽器を構えることさえも難しく、練習もなかなか進みません。

頭を動かせるように、腕も自由に、音をイメージしてシンプルに演奏しようと試みたり、と色々試してはいるのですが、多くの場合、ほんの一時しかうまくいきません。

そもそも楽器を持つと、今日はちゃんと音がなるだろうか、身体は大丈夫かな、と心配になり音をイメージすることも難しいです。

そこで、今日ふと思ったことがありました。

僕が本当に音楽家になれるのかな。

人より耳も悪いし、技術もないし、今こんな状態だし。

本当に音楽家になれるのかな。

そんな漠然とした不安、恐怖といつからか隣り合わせだったように思います。

小さな頃は、ただただ音楽が好きだという気持ちから練習に取り組んでたように思います。だから、上達もしましたし、練習も楽しかったです。

それに比べ、今は辛いと感じることがほとんどです。楽しくありません。

今週末、オーディションがあります。それに間に合わせるなんてことは、難しいと承知です。

しかし、間に合わなかったとしても出来ることをやりたいですし、オーディション後も楽しく上達していきたいです。

どうか、ご教授頂けますようお願い致します。

【バジル】

Hさん

わたしも最近、ジャズの演奏を聴いていてですが、

「こういうふうに、音で世界を創り出せるひとたちに憧れるなあ….こういうことができて、うらやましいなあ….
 でも自分はこういうものを、正直持っていないな….」

と感じました。

不思議なことに、そこには安堵感がありました。「自分はそういうひとで、それでもいいんだ」とも思えたのです。

上記した気持ちというのは、ピアノを始めた当初(6歳)からずーっとあった気持ちな気がするし、その気持ちがあったからずっと音楽に関わっているのだとも思います。

いままでは、その「自分はこうではないな」という気持ちを認めるのが怖かったというか、認めたら即、そこで努力する意味もホルンを続ける価値もなくなってしまうと思っていたのでしょう。

でも、ホルンをやってきたことに後悔はないし、これからも続けることは確かだし、音楽に関わる仕事をやり続けることも揺らがない。そういう自分軸がだんだん出来上がってきていたから、ふと認めるのが怖かった本当の気持ちが浮かび上がってきてそれを見て、感じても、自分が揺らがなくなったんだと思います。

これはほんの数週間前の話で、いまはホルンを吹くとき、そういう自分の「正直な気持ち」から出発することを心がけています。それが自分のいまの等身大だから。等身大で演奏すること・練習することを実験中です(実験結果は、とてもポジティブです ^^)。

自分の素直で等身大な在り方が、いちばん力を発揮できるとも思うんです。だから上達するためにも、よい演奏をするためにも、「自分は音楽を演奏する才能が及ばないなあ…このひとたちみたいにはできないな….」という気持ちを隠さず、受け止めて、「それでも吹きたいから吹こう」という動機でやっています。

長く悩んだわたしのあがり症問題も、これにすごく関わっている気がして、本当に良い演奏ができたときはいずれも、ホルン奏者としての評価やステータスやメンツや将来を放り出して等身大になって、「いいや、どうなっても。自分のまんまで演奏しよう」という気持ちになれたときなのです。わたしの場合は。なので、人前で演奏するための準備とは、いかにそういう気持ちをステージに立つ瞬間までに整えるか(整うのは演奏1秒前のこともしょっちゅうです)というふうにいまは自分で自分のために定義して実験中です。

わたし自身のことにひきつけて考えたので、客観的な分析やアドバイスは提供できていませんが、わたしがわたしの真実を少し理解することで等身大という力を得て前に進めているように、ひとはそれぞれの真実を持っていて、それに寄り添えたときに力を発揮できたり、幸せになれたりするのかな、と思っています。

最近はレッスンでも、そうやって直接的に教えたりはしませんが、教えるときに教える自分の真実に気持ちを向け、またレッスンを受けているそのひとの真実のことを想いながらレッスンするようにしています。

【Hさん】

さっそくのお返事ありがとうございます!ホッと胸を撫で下ろしながら拝読しました。

ディスポキネシスの先生がこんなお子さんとのやり取りを教えてくれたことがありました。

(泣いている子供に対して)
先生「悲しいから泣いてるの?
泣いてるから悲しいの?」

子供「泣いてるから悲しいの;;」

今までずっと、身体のこと、奏法のことばかり考えてきました。

でも、バジルさんのお話を聞いて、僕は泣いてるから悲しいんだ、と分かったような気がします。

僕の場合、小さな頃からすっごい演奏を聴いたら、

僕もやりたい!
こんな風に演奏したい!

と興奮して練習や勉強に励んでいました。

でも、出来ない。やってもやっても出来ない。そんな理想と現実のギャップに苦しんでいました。

でも、よく考えればすぐに理想の演奏が出来なくてもいいんですよね。少しずつ理想に近づいて、またその時その時の高い理想に向かっていく。それでいいんですよね。

等身大ですか。今の自分を知り、育てる。そうやって、地味だけどエキサイティングな毎日を過ごせたらなぁと思いました。

大変参考になりました!

当たり前のようだけど、ほとんど自分のことに照らし合わせて考えたことなかったことに気付かせて頂きました。本当にありがとうございます!

オーディションであろうと、大好きで尊敬する音楽であることには変わりません。目一杯楽しんでやってみます!

【バジル】

前を向く気持ちになれたようで、よかった (^^)

やりとりをぜひブログで紹介させてください。

【Hさん】

バジルさんのおかげです!

今日は一日気分良く、しかも実りある練習が出来ています。

気持ちが変わるだけで、こんなにも演奏が変わるんですね!
驚きです。

お役に立てるのであれば、ぜひぜひご紹介下さい。

貴重な体験に導いて頂き、本当にありがとうございます!

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やってもやってもできなくて、楽しくなくて、辛い….どうしたらいいの?」への11件のフィードバック

  1. バジル先生、はじめまして。いつもブログを拝見しております。
    私は高校三年生の音大受験生で、サックスを専攻しています。

    最近練習していて、吹いているうちにだんだん下顎の位置が左にずれていっているのが気になっています…
    途中で元の位置に戻しても、少し左にずれている方が音が安定するのかわかりませんが、また左にずれていってしまいます。

    私は数年前まで歯科矯正をしており、歯科矯正を始めるときに 下顎の位置が通常よりも奥(しゃくれの逆の状態です。)にあると診断されたため、まず顎の位置を変える装置を1年くらいつけてから歯並びを整える針金をつけた…という経験があり、もしかして他の人よりも顎の位置が動きやすいのかなあ?とも個人的には考えています。

    最近は位置がずれるせいか、吹いているうちに顎が疲れてきてしまって…左にずれてしまうことからか、顎の右側の付け根も少し痛くなってしまうこともあります。
    正直、この状態で吹くことに慣れたら顎にも良くないと思いますし、最悪、将来 顎関節症と診断されてサックスが吹けなくなったらどうしよう…!!と気持ち的にも心配で、あまり落ち着いて練習ができていません…!!
    ただでさえ半年後には受験を控えているというのに、本当に、すごく焦っています…。

    わかりづらい文章で申し訳ありませんが、お時間あるときにでも、お返事を下さったら嬉しいです。よろしくお願いします…m(_ _)m
    お忙しいところ失礼いたしました。

    • 演奏をしているときの顎の動きの左右差、というもの自体は、悪くない・問題でないものである可能性が高いと思います。
      顔の構造自体が左右非対称ですから、動きが左右で異なるのはむしろ自然なことが多いのです。

      自分の左右差を理解して、それにマッチして(沿って)からだのひねりを活用していけると奏法がとてもよくなることが多いです。
      左右差を矯正するという発想じゃないわけです。(演奏のテクニックにおいては)

      顎の痛みは、左右差ではなくおそらく顎や首の動かし方に原因があるかと思いますが、はっきりしたことはお会いして見てみないとわかりません。
      ぜひレッスンにいらしてください。

      Basil

  2. お返事ありがとうございます。
    なるほど…顎のズレがダメなわけではない、ということを知っただけでも、ホッとしました。
    バジル先生のブログをを今一度読み直してみると、自分は頭がガッチガチになってたかも、とか、改めて色々な発見をすることができました。
    しばらくはバジル先生のブログの内容を実践してみることにします。それでもダメなときは、またご相談させていただいたりレッスンも検討してみたいと思います。
    お忙しいところありがとうございました!

  3. こんにちは、僕は高校1年生で吹奏楽部でユーフォニアムを吹いています。

    最近、楽器を演奏するときの激しい緊張に悩んでいます。いつも緊張するわけではなく、合奏のみんなの前での一人吹きの際に症状が出てきます。特にそれがピアノの小さな音量の時だと体が震えてきて自分でも制御できなくなります。体を固定しようとしている自分に気がつくのですが、震えを止めようとさらに体をブロックさせてしまいます。今日も一人吹きをする場面があったのですが、体が吹く前から震えてきて仮病を使ってこの場から抜け出したいと思うほどでした。このあがり症がすぐに治るとは思いませんが、時間をかけてでも克服したいです。お忙しいと思いますが、なにかヒントとなることを教えていただきたいです。よろしくお願いします。

    • まさひこさん

      このブログには、お悩みになっていることに役立つこと、関連することがたくさん載っています。
      まずは記事をいろいろ検索して読んでみて、自分なりに使えそうなことを使ってみてください。

      緊張に関すること、音量に関すること、思考の毒抜きなど合わせて15個くらいは記事を読んでみてください。

      そのあと、

      ・どの記事を読んで
      ・どう使って
      ・どんな変化、出来事、効果があったか(もしくはなかったか)
      ・どんな気づきや疑問が残ったか

      を教えてください。

      • こんばんは。お返事ありがとうございます。返信たいへん遅くなり申し訳ありません。というのも少し長い時間をかけて自分の緊張について試行錯誤して考えてみる時間をとってみました。バジル先生の等身大で吹くという記事と緊張を抑え込まないということに関係した記事をじっくり読んでみました。
        気づいたことは私は緊張しているということをマイナスだと考えていたと言うことでした。できるだけ緊張しないように平常心で吹こうと考えてすぎて体が震えているんだと思います。なので、楽器を吹いていて緊張してきたらその緊張している自分を受け入れて、どんな音を毎回考えて吹くようにしてみました。そしたら緊張をパワーに変えて吹けるという瞬間が何回かありました。しかし、いつもそう上手くはいきません。そういう気持ちを作っていくためには日々どういう練習をしたらいいのでしょうか。

        • まさひこさん

          「何回かあった」ということは、そのやり方が有益であるということです。
          そして、その試みはまだ新しい。いつも上手くいかなくても不思議なことではないと思いませんか?

          どれだけ物事に上手くなっても、いつも完璧ってないですよね。

          練習の仕方に関しては、ちょっと検索すればたくさん関連記事がありますよ。「練習の仕方」っていうカテゴリーもあることにお気付きですか?
          ひとつ挙げるならばこれかな:http://basilkritzer.jp/archives/4554.html

          • そうですね。毎回上手くことなんてないですね。そう考えると、緊張しているからといって自分を守りにはいって萎縮して吹いてしまうことがすごくもったいないことだと思います。
            ありがとうございました。

            • そうそう、そうなんです。

              舞台って萎縮するような場所じゃ無いんですよね、本質的には。
              怖い。すごく怖い。でも「怖い気がする」なんだと思います。

              だから、どうやって幸せに(Or覚悟を決めてスッキリと)本番を迎えるか。
              その準備をどうやっていくか、なのかなと思います。

  4. こんにちは、いつもブログを拝見しています。
    私は高校三年生でチューバを吹いています。最近は夏のコンクールに向けて追い込みの時期になってきましたが、突然、ここ2,3週間ロングトーンの音が安定しなくなりました。(特にチューニングのB♭)今までは普通に吹いて伸ばせていたのですが、今では音程が吹いてる途中にうなぎのぼりに上がっていくのです。そして、それと同時に唇が不自然な震え方(痙攣?)をします。
    ブレスを多くしたり少なくしたり、息のスピードを早くしたり遅くしたり、このブログに書いてある「頭を動けるように」など、様々なことを試してきましたが、唇の震えが止まりません。
    これは、唇を壊してしまったとか、ジストニアとか、そういった症状なのでしょうか?思い返してみると症状が出始めたのはコンクールの練習が本格化して忙しくなってきたときで、いい演奏に向けて、「音をしっかり当てる」「まっすぐ伸ばす」など自分にプレッシャーをかけすぎていたこともありました。
    それとも、単なる私の技術不足なのでしょうか?
    お返事よろしくお願いします。

    • タケシさま

      もしかしたらジストニアかもしれませんね….。

      ・ひとつできることは、自分から自分へのプレッシャーを極限に少なくすると、どうなるか。
      ・コンクールが終わって数日〜数週間したらどうなるか。

      これで改善すればプレッシャーからくるものでしょうし、それでも全然変わらなければジストニアも考えられますね。

      ジストニアについてはこちらの方に質問してください。
      http://musik.grupo.jp

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