きょうは、「ひとに教わるコツ」についてお話しします。
ひとに演奏に関することを何か教わるとき、大切なのは
①教えに従う義務はないこと
②でもやると決めたら徹底的にやってみること
です。教わってもやるかやらないかは自分次第だし主体的に自由に自己責任で行動するということですね。
自分の歌・楽器の先生や同門の先輩、部活の先輩や同じ楽団の年長者から教わるときに教えを目一杯吸収するにはどうしたらいいのかを探りたいと思います。
【言う事を聞く義務もいわれも無い】
まず教わる側として、教わるときに大事な姿勢があります。
それは、相手が教えてくれるからといって、教えてくれることに全部従わなくてよい、ということ。ピンときていない、あるいは納得していないのに、相手が先輩または偉い先生だからと言って一生懸命全て言う通りにしようとしなくてよいのです。
教わる側に、教えるひとのいうことに従う義務はないのです。
内心、
「これは逆効果なんじゃないか」
「これだとおかしくないか?」
と感じているのに、言われた通りにそのまま従ってしまうことは、むしろ危険です。自分の感覚を無視して、相手の言いなりになってしまうのは実は自分自身に対してちょっと無責任になっているのがわかりますか?
納得していないことを忠実にやり続けても、それが調子を崩す原因になってしまうこともあります。
【ピンとくるものから取りくむ】
なので、先生や先輩から何かを教わるとき、まずは
・ピンとくるもの
・興味や説得力を感じるもの
・効果を実感できるもの
から徐々に取り入れてみましょう。なお、よく分からないことでも「これはいいかも」という気がするならば臆せず取り入れてみましょう。あとでやめることもできますから。
これだと、教わっていることを無駄にしているとか、相手に失礼だという気持ちになるかもしれません。その気持ちはよくわかります。
でも、そのときピンと来なかったから取り入れなかった事でも、「教わった」のは確かです。どこかで記憶や体験として残っています。良い先生とのレッスンはずっと後までなんとなく余韻が残っているものです。それに後々になって言われていたことの意味が分かる、ということはしょっちゅうあります。
ですから、何も無駄にはなっていません。
なので、安心して「いまの自分に役立つこと」から選択的に取り組んでいくことが、主体的に学べて、自分で自分の責任が持てます。これは時間はかかるかもしれませんが結局はより深く学べるやり方だと思います。
【やると決めたら、徹底してやる】
もし、教えてもらったことの効果を実感したり、強い興味を感じたり、「これは大事だぞ」という直感を得たら、それは取り入れて、全身全霊でやってみましょう。
教わる、習う、ということは「外部の力に自分が影響される」ということです。外部の力があるからこそ、自分の殻や壁を破れます。
ですから、信頼できるアドバイスやアイデアで、これは取り入れようと一度決めたなら、徹底的にやってみましょう。それでこそ、自分に何らかの変化をもたらせます。
やるのかやらないのか、その「中間」はありません。
「中間」は結局のところ取り入れるふりをしているだけであり、実は自分に変化をもたらさないのです。
一度取り入れないと決めたものでも、後で考え直して取り入れることはいくらでもできます。ですから、「いま」、自分はどうするのかをはっきりさせましょう。
取り入れないと決めたら、さっと次に進みましょう。
取り入れると決めたら、徹底してそのアイデアを試してみましょう。
【教えてくれるひとが「言っている事」と「やっている事」】
模範としたいひとに習えるチャンスがあるとします。
そのとき、教えてくれるひとは、「自分がやっていると思っている事」を教えてくれるます。
しかし、そのひとが自分がやっていると思っている事と、そのひとが「実際にやっている事」は異なっているかもしれません。
その場合、あなたが取り入れたいのは、「その人がやっている事」の方です。
「(やっているつもりで)言っている事」と「(実際に)やっている事」が異なっている事はよくあることです。だからこそ、指導者はレッスンをすることを通して自分がやっていることをより正確に把握してそれを自分の演奏に活かす経験に恵まれます。(なので、教えることは自分の為になります!)
習う側としてのあなたは、先輩や先が実際にやっている事のなかかからなるべくあなたにとってうまくいっている事だけを、上手に取り入れたいのです。
【先生・先輩にとっても教えやすい】
先輩や先生に師事するということは、言う事に従うことではなく、「そのひとから吸収できるもの・吸収したいものをできる限り吸収して自分自身を成長させる」ということなのです。
実は教える側としても、そういう生徒の方がよっぽど教えやすいのですよ。受け身だったり、自分の意見を言わない生徒より。
Basil Kritzer
先生ご無沙汰しております。以前仙台のセミナーを受講しました。中澤と申します。歌を専攻しておりまして、遅ればせながら学生をいたしております。先日大学に先生が来てくださったのに、講演を拝聴できずとても残念でした。
わたくしは病持ちでして、少しでも体調が良くなかったり、自分の中の良いポジションに入れない日はとても歌いづらく、ブレスも短くなってしまいます。
コンスタントに良いポジションでエネルギーのロスがないように歌いたいと思っておりますが、なかなかうまくいきません。
呼吸についてと心についてよく学びたいと思っております。
よろしくお願いいたします。
中澤さま
お久しぶりです!
この頂いたコメントが、ご質問としてなんらかのわたしからの見解をご要望なのかどうかが
確信がないのですが、そうだと仮定して返信致します。
まず体調の良悪の別なく、どのようなポジションをイメージされており、どのようにしてそこに「入ろう」としているか
そのやり様を直接見ないことにはしっかりしたアドバイスはできないのが心苦しいですが、
ひとつ思ったことは、体調の悪い日は、そもそも練習をしない方が長期的にみて全体的には歌い方が良くなる可能性があるのでは?
ということです。
また、体調の良い日を基準にして、良くない日も良い日と同じようなペース、順番、量で練習したり、良い日の感覚・感触を作り出そうとしながら悪い日も取り組んでいるとしたら、それは「体調がきょう/いまは悪い」ということを無視したやり方になってしまうという面があるのではないかな、とも思いました。
体調の良い日と悪い日とでは、練習のやり方や歌っている感覚・感触をかなり変えてもよい可能性はありますか?
そうすることでこそ、結果的に良い日と同じかそれに近いぐらい歌を機能させることができる可能性はあるでしょうか?