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アマチュア女性ホルン吹きとのレッスン。
座奏のとき、楽器を構える直前にピッと背筋を伸ばし骨盤を立てる動作をやっている。
指摘すると自覚はあったようで、「それなしで」やってみることに快く同意頂いた。
合奏中に疲れて飽きたときの姿勢になれますか?(笑) と話をして、すぐに通じてクニャっと丸まり小さくなった体勢に。
そのまま吹いてみていただくと・・・全般的に吹きやすいわけではないが体はラクで、思っていたよりは随分と吹きやすい、とのこと。
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そうすると次の疑問は、「なぜ体をしんどくしてまで、吹きやすくもない姿勢を普段はわざわざ取っていたのか?」ということ。
そこでその方から出てきたのは、姿勢コンプレックスのお話だった。
この方は背が高めで、腕脚そして首が長い。関節柔らかく、クネクネした身のこなしの方だ。モデルさんにもそういう体型の方がいるのでイメージしていただけるだろうか。
そうすると、同じ椅子や譜面台や楽器でも、周りの人よりはそれらは相対的に小さめ低めとなる。だから少しかがみ込むような格好になるわけだ。体型の特性と相まって、ピンとした印象よりクネッとした印象になる。
それを、昔から姿勢が悪いと言われて気にしてきたとのこと。構える前の背すじ伸ばしと骨盤立てはそれの現れだった。
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そこで、さきほど検証した通り、それをしないほうがラクなのが分かっていたので、クニャっと小さくなった体勢を「正しい出発点」と仮定し、ただしばらく吹いてもらうことにした。
すると、すぐに、勝手に姿勢や体勢は動き始め変化し、呼吸のたびに起き上がってきた。ラクに、無理することもなく。
望ましい形や見た目というのは、固定的(スタティック)に外側から予断することは賢明ではないという好例だったのではないかと思う。
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姿勢というものは様々な体の動きの総体であり、時系列のなかで連続的に変化する。この動き・変化が自身の為そうとすることに適合的で有益かどうかで判断するというのはどうだろう。
判断の基準は
・パフォーマンスへの有益性/阻害性
・快適性
・その他の、当事者の主観・直感
になるだろうか。
一点目のみが他者からも判断できること、というのも大事なポイントだし、このような判断基準だとどのような姿勢(動き)が良いかは比較により行うことになるのも大事なポイントだ。
言い換えれば、他人の姿勢が良いとか悪いとかは、他人が予断できないのだ。
BasilKritzer