本番の緊張に負けてしまう危険が高い練習のやり方とは?

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きょうは、練習は実は「できないことをできるようにする」ためのもののように思えて、実はちょっとちがうんだ、ということをお話します。


音楽の練習は実のところ、



「できるかできないかは関係ない。やりたいからやる。」

というのが大切なポイントです。

さあ、これはいったいどういうことなのでしょうか?



【練習は何のため?】

吹奏楽部で育ったひとが多いわたしたち管楽器を演奏するひとたちは、

「〜ができない」から練習するとか、
「〜をできるようにする」ために練習する

という考えることはごく当たり前だろうと思います。

しかし、この考え方は、じわじわとわたしたちの首を絞めていきかねません。なぜなら、練習の目的が「できないことをできるようにする」ことになっているからです。


なぜそれがいけないのか?

「できないことをできるようにするのが練習だ」という考え方は

「〜ができないうちは、演奏してはいけない」
「〜ができていないのは、練習や努力が足りない」
「完璧にできるようにならないと人前で演奏する資格はない」

というような考え方にどうしても行き着いてしまうからです。

そして、こういう考え方になってくると、ひとはどんどん緊張し演奏できなくなっていきます。まさに「音が苦」の世界です。



【疲弊する練習のやり方】

「練習する」ということと「演奏する」ということが、別々のものになっています。

・ダメなところを直す
・苦手を克服する
・いっさい粗を無くす

それが練習の目的になっています。じゃあ、どうしてダメなところを直したいのか?苦手を克服したいのか?粗を無くしたいのか?

たいてい、

「恥をかきたくない」
「批判されたくない」
「ミスをする自分は価値がない」


そんな想いがあるからです。

この時点で、もう「音楽をしたい」という気持ちから遠く離れてしまっています。ひたすら自分と闘っていて、自分をやっつけているような感じですね

そういうことをずーっと続けていると、本当に疲れてきてしまいます。



【緊張に呑まれてしまう】

できるようにならないと、自分には演奏する資格がない。いまの自分の腕前では、ひとに聴いてもらうには値しない

練習をこのような、できないことをできるようにする作業として捉えている限り、いつまでも自分は「演奏する資格がない自分」であり、そんなダメな自分をなんとか演奏してよい自分にするのが練習だということになってしまいます。

そして、もちろん本番までに全部思っているようにできるようになるなって、稀です。だから結局、「本当は演奏する資格がない自分が舞台に上がってしまった」という気持ちをわざわざ自分で作り出して本番に臨む結果になってしまうのです。

これでは本番の緊張に呑まれてしまいやすくなったり、落ち込んだり、ひいては無気力になってしまいます。練習でもできるようにならないし、本番は緊張してもっとダメになってしまうのですから。



【「欠点直し」は演奏の準備につながらない】

本番直前まで、「欠点を直す」「できないことを減らす」のが練習や準備だと思って一生懸命そういう作業をやっていたのに、本番になると突然、音楽を演奏することが求められます。

音楽の演奏は、欠点を直すとか、できないことを減らすとか、ダメな自分を克服するとかそういうことは一切関係ありません。

音楽は創造行為・表現行為です。


それまで練習で「できないことをできるようにする」ことだけを目的にひたすらやってきたところで、いきなり本番で初めて、創造・表現という全くちがうことをやろうことになるのだから、それはパニックなったりどうしたらいいか分からなくなっても不思議ではありません。

練習の段階から、創造行為・表現行為を行わないと!



【練習は、純粋にしたいからするもの】

さてここで、わたしのからの提案は、

『練習をすべて、「〜したい」からする作業にしてみませんか?』

具体的にはこういうことです:

「この曲の、ここが聴いていて感動するから、自分もぜひ演奏したい。だから、その曲を演奏する。」

「この作品に込められている、こういう意味やメッセージに深く共感するから、自分もぜひそれを伝えたい。だから、その曲を演奏する。」

「こういう音を奏でたいから、この音階練習でその音を出そうとしてみる」

「こういうテクニックを使って表現したいから、その練習をする」

etc…

そういう発想と意識で練習をするのです。

でも気をつけてくださいね!簡単に「できていないからできるようにしなきゃ」とか「これができていない自分はダメすぎる」とか、そういう方向に気持ちが向きますから。

上述の例は、どこにもそういうワードが入っていないでしょう?

試しに、「この」や「こういう」といったところに、自分に当てはまるやりたい曲や奏でたい音をあてはめ、そして口に出しながら練習をスタートしてみてください。

「やりたくてやる」演奏過程が、結果として「練習」になっているようにでるのです。



【テクニックや基礎の練習も同じ】

演奏を支える様々な技術的側面に取り組んでいくであろうことは、当然です。

・音階
・アルペジオ
・リップスラー
・ロングトーン
・フィンガリング

etc…

そういった技術や基礎練習はいずれもそれらを使って演奏したいことがあるから、その演奏したいことのためにやるものなのです。


「〜が演奏したいけれど、現状技術が足りないから、それを直すために基礎練習をする」

というような発想とは異なるのが分かりますか?


楽器を使って、音楽を使って「やりたいこと」がある。
楽器の音、音楽が自分とって「大切なもの」である。

だから、演奏する。

演奏に取り組みチャレンジしていくうちに、だんだんうまくなっていく。その結果が「練習」なのです。

すべて、やりたいことや奏でたい音に向かって一歩一歩進む作業なのです


Basil Kritzer




18 thoughts on “本番の緊張に負けてしまう危険が高い練習のやり方とは?

  1. こんにちは!ホルンを吹いています。高校2年生です。


    今年のコンクール曲では、ハイDが出てくるのですがその音がどうしてもあたりません。
    中学からホルンをやっていたのですが、高校に入り、マウスピースも楽器もアンブシュアも変わりました。
    そのせいなのか、中学の時にハイFまで出ていたのが高校に入ってからはハイDすらでなくなってしまいました。
    また、高い音を吹いていると練習しているうちにだんだん雑音が入ってくるようになってしまいます。
    また、その練習中に首から肩にかけてとても力が入ってしまいます。
    そのせいで、肩が凝ってしまうほどになってしまいました。腰にも痛みを感じる事があります。
    力をかけずにラクに高い音を吹くにはどうしたら良いでしょうか?

    回答お待ちしております。

    • まなさま

      はじめまして。

      ・中学から高校に入ってから、どんなことを考えるようになったか
      ・高い音を吹くためにどんなことを意識しているか

      そのあたりのことをもう少し教えてください。

      • 中学の時には、自分の見本になるような音を吹いている先輩がいませんでした。なので自分で好き勝手に吹いていたのだと思います。自分が吹きたいように。
        (ただ、それが正しい音色なのか音程なのかわからず、「高い音が出る=上手い」と考えていたと思います。)
        しかし、高校に入ってから自分の目標にしたい先輩ができたのでその先輩のアドバイスをとにかく実践していきました。具体的には
        息をしっかり使う。
        自分の吹きたい音を想像する。
        体に力が入らないようにする。
        他にもたくさんありますが、言われた事を「やろう!」と考えています。

        高い音を吹くときには
        お腹できちんと支える。
        唇を引き締めて高い音を吹くときのアンブシュアにする。
        息の量を増やす。
        しかし音色は綺麗なままで。

        高い音でなければ先輩に言われた事はある程度できるようになったのですが、高い音だけがどうしてもできません(;´・ω・)
        とくに力が入ってしまうのです。


        返信遅くなり、申し訳ありませんでした。回答よろしくお願いします!

        • まなさま

          文章を拝見していて、考えていることを工夫できそうなところがあるとすれば

          「高い音を吹くときにはお腹できちんと支える。」

          →「支える」という言葉は、けっこう抽象的で体には通じにくいかもしれません。「息を吐くときにお腹を内側&上方向に動かす(凹ます/絞る)」と考えてみたらどうなるでしょうか?あと、息を吸うときはお腹を支えようとしないでくださいね。息を吸うときは、おなかは完全にお休みで緩ませてあげてください。


          「高い音を吹くときは唇を引き締めて高い音を吹くときのアンブシュアにする」

          →ひょっとしたら、音を出す前にアンブシュアを感じようとし過ぎ、準備し過ぎになっているかもしれません。 もうちょっと単純に、「息を吐くときに思いきりよく口を閉じる」くらいでよいかと思います。

          練習方法としては、

          1:出す音を決める
          2:口を閉じる
          3:マウスピースをぐいっと口にくっつける
          4:そのまま息を吐いて音を出す


          ということを順番通りに意識してやっていると、音を出す感覚にはっきりした手応えが得られるかもしれません。


          「しかし音色は綺麗なままで」

          →これも、ひょっとしたら硬さにつながるかもしれません。音色の変化を禁止しているからです。音色は、音を出してみたあとに振り返って考えればよいので、音を出す前に「キレイに吹こう」という意識は、たぶん無い方がよい結果につながると思います。


          あとはですね、やはりプロ演奏家の音を間近で聴かせてもらうことが重要だと思います。

          • バジル先生。

            とても詳しく具体的なアドバイスありがとうございました。

            どれも納得するものばかりで自分にとてもぴったりなアドバイスを頂きました。

            今日の部活動で先生に言われたことを意識して実践したところ、久しぶりにハイDをだすことができました!
            しかもいつもより力をいれないでだすことできました。しかし、まだまだ成功率が少ないのと、
            4.そのまま息を吐いて音をだす←自然に吐くことができません。

            ができないので、自分のモノにできるように少しずつ精進していきたいと思います。

            つい先日、国立音楽大学のワークショップで、元東京佼成ウインドオーケストラ首席、国立音楽大学講師の井手 詩郎先生にレッスンしていただく機会がありました。多人数のレッスンだったので個別にみてもらうことはなかったのですが、
            プロの音を間近で聴き、楽器の基本を教えていただくことができました。私にとってとても良い経験でした。

            これからもこのような良い経験を積み重ねていきたいと思います。

            いつもバジル先生のブログを拝見させていただいているのですが読むたびに私の悩みが一つずつ解消されていっています。これからもホルンとは末長く付き合っていきたいと思っていますので先生の言葉を支えに頑張ります。

            回答ありがとうございました。

            • まなさま

              とても励みになるコメントありがとうございます。

              ハイDが実際に出せたという具体的な成果につながったことをとても嬉しく思います。

              >4.そのまま息を吐いて音をだす←自然に吐くことができません。

              「自然に」というのはどういうことでしょうか?

              日常の呼吸よりからはかなり、お腹の力も使いますし、お腹の力を「溜める間」のようなものが少しあるように感じたとしても、
              それは問題ありません。

  2. 演奏会本番近くになるほどどんどん練習が苦しくなり、演奏会が明けた最初の練習がなぜだか一番楽しくて楽器も良く鳴っている、という現象の謎が解けた気がします…。
    練習への取り組み方が違ってたんですね。
    皮肉な現象なのですが、同時に希望も感じます。
    練習ノートに「目標・課題」を記すのを止め、「興味・次にやってみたいこと」を書くようになり、楽器ケースを開けるのに気が重い…なんてことは無くなり、毎回新たな気持ちで取り組むことができるようになってきました。(週末ホルン吹きだからこそ、かもしれませんが)

    • MNさん 演奏会後の練習は、ほんと楽しいですよね(笑)わたしも高校時代からそうでした。けっこうみんなもそうなんだと思います。目標課題から興味やってみたいことへの移行は、目立たないですがデカイですね。その後の進捗をまた聞かせてください!

  3. はじめまして。
    「かどさんとウクレレ」というブログで紹介されていて、
    ここにお邪魔しました。
    私は管楽器ではなく、ウクレレを弾いています。

    楽しくて始めたのに、少し弾けるようになってくると、
    「あれができないから、練習しないと!」と義務感に
    とらわれてしまってしまいます。

    でも、この記事読んで、ホッと一息つけました。
    ありがとうございました:-)

    • たんたんさん

      記事が役に立って、とても嬉しいです。

      義務感…. ほんとうに不思議ですよね….

      義務感をかき立てるというやり方は、きっとわたしたちが訓練させられ、覚え込まされる「癖」なんだと思います。

  4. バジル先生。

    私が感じた自然に息をはく事ができないという事ですが、なんだかずっと喉が詰まる感じがしているという事でした。
    鏡で自分の演奏している姿をみると、とても喉に力が入っている事がわかりました。
    だいぶ全身の力は抜けてきたと思っていたのですが、首の力がどうしても抜けないようです。
    また、先日ホルンの講師の先生がいらっしゃったときに私の肩こりがひどくてそのせいで首に負担がかかって力が入っているのかもしれないといわれました。肩が凝るのは、ホルンを吹いているからでしょうか?
    重たいカバンなどを持っているからでしょうか?あまりよく原因がわかっていません。
    また、講師の先生には内転筋も鍛えた方が良いといわれました。

    首に力が入るのは高いFからGに上がるときです。それまではあまり力は入らないのですが、Gになった時に急に力が入るようです!よく観察して発見しました。

    首の力と肩こりにどのような関係があるのか知りたいです。
    それとも関係はないのでしょうか?

    • まなさん

      すばらしい観察と分析をされましたね。

      その調子で、ひとのいう事より、自分の目、耳、身体感覚で観察したこと、
      そこから導きだした結論をいちばん大切にしてください。


      >私の肩こりがひどくてそのせいで首に負担がかかって力が入っているのかもしれないといわれました

      たぶん逆で、首に負担がかかっているから、肩こりになるんだと思います。

      首凝り、肩こり、肩甲骨と肩甲骨の間の凝り、はだいたいセットになっています。

      関与している筋肉が同じだからです。

      考えられる原因は2つ。

      ① 楽器を吹くとき、マウスピースを最後まで口元まで持ってきていない。つまり、マウスピースと口をつけるときに、頭と首をマウスピース方向へ持っていっている

      → 腕を前方向に動かしつつ、肘を曲げ、楽器を自分の方に向かわせましょう。


      ②プレスが足りないため、それを補おうとして頭と首がマウスピースにおしつけられている

      →プレスはしちゃいけないとよくいわれますが、それは本当ではありません。腕の力でしっかりプレスをしましょう。そうすれば、頭と首は自由でいられます。


      ③息の圧力が足りないため、頭と首で圧力を作っている。

      →お腹の力で息を吐く事で改善します。詳しくはこちら→「息の圧力の作り方」http://basilkritzer.jp/archives/995.html



      >講師の先生には内転筋も鍛えた方が良いといわれました

      これは、たぶん必要ないと思います。
      忘れてしまって大丈夫でしょう。


      >首に力が入るのは高いFからGに上がるときです。それまではあまり力は入らないのですが、Gになった時に急に力が入るようです!よく観察して発見しました。

      すばらしい発見です。

      GとFとでは倍音列が異なるので、実質的には「ただ1音高い」だけではないのです。
      Gが出せれば、それはハイBbと実質的には「同じ高さ」なのです。

      なので、「ハイBbを吹くつもり」でGを吹いてみてください。

      おそらく 「Fと同じ力」でGを出そうとしていて、それでは力が足りなくて、首が緊張するのです。

      ですから「ハイBbと同じ力」でやってみましょう。そうするとたぶん、首の力みは減ります。

  5.  いつも楽しみに読ませていただいています。私が昔から基礎練習が嫌いなわけがわかりました!「指が回らないからスケール」「音が安定しないからロングトーン」つまり基礎練習は、自分の出来ないことをまざまざと見せつけられる過程だったから嫌だったんだと思います。実際に出来ないから→やりたいからに変換する具体的な方法はまだわかりませんが、自分をいじめている思考をまたひとつ発見できたのは収穫です。ひとつ案としては、こうしたらどうなるだろう、という実験的な取り組み方がいいかもしれないな、と思っています。
     所属楽団のプロのOb奏者が「本番前にアップの為スケール等をやると、調子が激下がりになる。スケールは超根本の基礎で本当は難しいので、「こんなこともできない、あんなこともできない」と自分の出来ないことを見せつけられて落ち込むから」と言っていました。もちろんスケールが悪いのではなく(笑)用い方ですね!

  6. そういえば、私は大学の調査隊に加わって外国で2年ほど暮らしたことがあり、2年かかって現地語と英語の日常会話には困らなくなりました。その間、「語学がだめだから克服しよう」と一度も思ったことがありませんでした。ただ汗かきながら必要なこと話したいことをめちゃくちゃに言ってるうちにできるようになっていました。2年目に日本から遊びにきてくれた友人が、私が2ヶ国語を駆使してべらべらしゃべってるのを見て「私もしゃべれるようになりたい!帰ったら英会話学校に行こう!」と言ったのを聞いて私は激しい違和感を覚えました。それは「できるできないは関係ない」と同じことを当時の私が感じたからではないかと思います。それはたぶん、しゃべりたいことがあって技がついてくる。技を身につけてからしゃべるのではない、ということです。
     私が何のネガティブな思いをもたずに上達できたのは、ひとつは「語学を勉強しに来たのではない」から、ということもあると思います。調査に来たのですから、語学が下手だろうが流暢だろうが自分の存在意義になんの関係もありません。だから、上達していく過程はただただ楽しかったです。外国語でしゃべる。反応が返ってくる。なんて楽しいことでしょう!!!音楽で私がいまだに緊張するのは、その上手下手が私のプライド(存在意義)と関係している(と思い込んでいる)からだと思います。音楽の本来の仕事と上手下手は直接に関係がない、そのことを私はわかりつつあるようですがまだ完全にはわかっていないようです。

      • すっかり解脱したようなことを書いて恥ずかしいですが(笑)お役に立つならどうぞお使いください。もうひとつ思い出しました。人づきあいが苦手、女性が苦手など苦手なものは実は「まんじゅう怖い」だとどこかで読んだことがあります。実は好き過ぎるからだと!バジルさんがおっしゃってることと似ていますね!

  7. 明日が本番です。ゆったりとしていて長めのソロを演奏させていただくのですが、ソロの後半になると突然緊張してきて、唇がものすごく震えてしまいます。
    緊張で唇が震えるのを防ぐ方法を教えてください

    • 鈴木さん

      「答え」にはならないかもしれないけれど、関連したり役に立ったりするかもしれない記事はたくさんあるので、

      「震え」
      「緊張」
      「本番」

      などのキーワードでこのブログを検索していろいろ記事を読んでください。

      唇の震えそのものを止める方法は、ぼくは持っていません。

      Basil

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