「7年間で一番大きく変化したー。」牧野翔さんのアレクサンダー・テクニーク体験談

アレクサンダー・テクニーク教師資格取得要件であった実習レッスンを10回受講下さった、東京大学卒業でボリビア民俗吹奏楽器を演奏されている牧野翔さんの感想をご紹介します。

1. これらのレッスンを受けて、アレクサンダーの発見について何を学びましたか?これにはあなたが経験して良かった点、難しかった点の両方を含めて下さい。

学んだうち一番大きなことは人間の身体がとてもよくできているということでした。これは人間の身体本来の協調作用を取り戻せば、今まで難しいテクニックなどを考えながら演奏していたものが、いくつかのことをたまに思い返す以外には何もしないで演奏出来るというのがあげられます。

しかも、今までとは異なり、音楽をすることが断然楽しいのです。これは今まで音楽をしてきた中で一番うれしい出来事でした。例えば音の聞こえ方一つとっても、他のテクニックの処理に頭をとられることがないためか、すごく豊かに聞こえてきました。楽器の鳴りにしても、これが本来の楽器の音なのかと驚くことしかり。

これを実現させてくれたのが、頭を自由にし、脊椎を元の状態に整えることや、股関節を意識することでした。それによって、身体本来の機能が取り戻されたように感じました。

また、楽器の構造上、頭を沈めることで楽器に顔を近づけていたのが、頭、腕、胴の全ての動きを調整することによって、まったく違う回路を通して演奏を行うようになりました。これを通して大きく楽器のとらえ方が変わりました。加えて、楽器の構造上、音を一音一音吹きがちだったものを、バジル先生のアドバイスでメロディを吹くように意識した結果、胴での息を使う仕事の仕方がガラリと変わり、音楽的にもとても大きな前進がありました。これはバジル先生が管楽器という専門性を持っていることの大きなメリットだと思います。

難しかったのは、身体を本来の協調作用が出来る状態を認識し、それでよいと認めることでした。どうしても、今までの習慣的な動作というのが身体に染みついていて、時にバジル先生が手助けしてくれて成立しかけた状態に「No」と言ってくることがありました。

が、しかし、楽器の演奏であれば楽器を通して出る音で自分の状態が良いか悪いかが判断出来るため、ただ身体を動かしてコントロールするのに比べて、より方向付けを認めやすいと感じました。

2.あなたが学んだことを日常生活に活かせると思いますか?

今回10回のレッスンを通して学んだのは、音を豊かにするテクニックにとどまらず、今後も長い間に渡って使える自分を教育する手法でした。アレクサンダーテクニークによって、自分の状態を知り、分析し、新たな回路を作り出すことは、音楽をやる上ではもちろん、それ以外の普段の歩く、座る、本を読むなど様々なことに応用しうると感じました。

3.教え方やレッスンの間の実習生の振る舞いをどのように感じましたか?

今回、私はサンポーニャというボリビアの民衆音楽に使われるパンフルートを通してレッスンを行いました。かなり他の西洋楽器とは異なる楽器なのですが、1回1回ごとにやりとりをとおしてこの楽器への身体の使い方をバジル先生と2人で見つけていったように思います。バジル先生は様々な形で、自分が今まで使ってきた身体の使い方を問い直し、時に新しい方向に無理なく導いてくれたと感じました。
基本にある「頭を自由にして身体が楽に動く」「音を通して最終結果をみる」という方針は守りつつ、時に異なるアプローチも試しながら、柔軟にアレクサンダー・テクニークの概要を教えてもらうのは体験的にも知的にもとてもスリリングでワクワクする体験でした。

4.その他、何でもコメントがあればお願いします。

音楽を初めて7年間で一番大きく変化した1ヶ月間でした。最初のワークショップを受けた頃、上達しないどころか、練習する度に苦しく下手になっていく自分に落ち込み、一時音楽をやめようかと思っていました。それが、落ち込む必要もなく、楽に良い状態をキープし、観察・分析を通して改めていくことが出来るとわかり、とても気分が楽になりました。

アレクサンダー・テクニークは単なる姿勢術や整体ではなく、観察・分析を基にした非常に合理的な自己教育のシステムであると感じます。身体の痛みや不要なプレッシャーに苦しむ音楽家の出来るだけ多くが、何かしらのきっかけでこのテクニークに触れてくれたらとねがいます。

2011/3/15
牧 野 翔

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「7年間で一番大きく変化したー。」牧野翔さんのアレクサンダー・テクニーク体験談」への1件のフィードバック

  1. 2012-03-22

    3月4日、横浜青葉オーケストラ管楽器セクションのみなさんにご招聘頂き、管楽器&アレクサンダー・テクニークのセミナーを行いました(レポートはこちら)。 そのときご参加頂いた伊藤正さん(ホルン)からの後日談をお寄せ頂きました。日々セミナーで得たヒントを試しておられ、様々な発見をされています。そのお声をここに紹介致します。 伊藤正さん(ホルン) …. 昨日のオケの練習では、やはり首から背中にかけて疲労感が残りました。以前と比べて唇の振動が起こりやすくなっています。上唇の裏側の皮が少し剥けました。(こんなことは、初めてです。)ゲシュトップの音もラクにビリビリ鳴ってくれて、びっくりしました。 …..また、左手の薬指を動かすときに、左腕に緊張が発生することが自覚されたので、小指の掛け金の位置を調整しています。自分の変化を、とても楽しんでいます。 ….アンブシュアやアパチュアの概念が大きく変わりつつあります。「正しい音を出すためには正しいアンブシュアが必要」という意識は不必要ではないか、と思うようになりました。 …..「正しい手順を踏めば、結果的に正しい音が出る」という意識が芽生えつつあります。これは、身体の中を通り抜けていく息が前より強く感じられることに起因しています。

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