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アマチュア男性ユーフォ吹きとのレッスンでのことです。
高音域が出しにくい、バテるとの主訴でレッスンにいらっしゃったのですが、拝見・拝聴すると実音F(第6倍音)あたりから音がかなりかすれていて、それより高い音は非常に速い息か強いタンギングでなんとかときどき鳴らせているという状況でした。
見ていてすぐ分かったのは、「呼吸をあまりしていない」ということ。息をする動きがとても小さい状況でした。
そこで、近頃よく試している『腹式・胸式適性テスト』をしてみました。
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《腹式呼吸》
①お腹をわざと膨らませながら息を吸い、
②膨らんだお腹をそうして膨らませたまま保つことにしっかり力をかけながら
③息を吐いて音を出す。
④強く吐きたいときは胸をしぼませる
《胸式呼吸》
①肋骨や胸、肩が膨らんだり拡がったり持ち上がったりするのを促しながら息を吸い、
②そうして拡がったところを拡がったままに保ちながら
③息を吐いて音を出す。
④強く吐きたいときはお腹を凹ませる
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この方の場合、後者の胸式呼吸の方がやりやすそうで、本人もそう感じたのですが、興味深かったのは、《腹式、胸式、どちらでもいままでより格段に音が良くなった》ところです。
管楽器は、『吐いている息』で唇、リード、エアリードを振動させて音を出しています。ということは、息を吐く=肺に入っている空気が肺から流れ出て唇・リード・マウスプレートに当たる必要があるのです。それが息を吐く目的です。
息を吐くには、胸かお腹か、少なくともそのどちらかが凹む・しぼむ必要があります。そもそも、胸かお腹か、そのどちらかが膨らんで肺の周りの空間が広くなることで空気が流れ込んでくる(=息を吸う)ので、それをまた外に出て活かせるには、膨らんだものがもとに戻る必要があります。
腹式、胸式、そのどちらもいままでより良い結果を生み出したのは、いままでが
『呼吸の動きが止まっている=空気が出入りしない=吸えない吐けない=唇・リード・エアリードが振動しない=音が鳴らない・鳴りにくい』
という状況だったからでしょう。
これは取りも直さず、呼吸の基本とは腹式胸式以前に
《身体のどこかが膨らんだりしぼんだりして、空気が出入りする》
ことを意味します。
呼吸で悩んでいる方は、たくさん吸おうとか、速く吐こうとか、正しく呼吸使用とするその前に
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☑息を吸うとき、身体のどこかは膨らんでるかな?膨らんでないなら、膨らむのを促してみる
☑息を吐くとき、身体のどこかはしぼんでいるかな?しぼんでいないなら、しぼむのを促してみる
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ということをオススメします。
このユーフォ吹きの方の場合、そのあと自身にどうも適性があるらしい胸式呼吸をもっと使いこなしていくことをレッスンで進めていきました。
そのとき、『息を吸うときに胸をふくらまし、吐くときにお腹あとからふくらましている』ということが起き始めました。
ご本人にとってもこの動作はどこかで馴染みがあったらしく、わたしが説明するまでもなく、「これだと膨らましてばかりで息が吐けないですね!」とお気づきになりました。
そして、そこで改めて《呼吸の基本は、吸うときにどこかがふくらみ、吐くときにはどこかがしぼむ》をリマインドしてみると、そのときにレッスンの中でいちばん音が良くなり、高音も最初よりずいぶん改善しました。
そして折よくそこでタイムアップ。
これからの進展が楽しみです🤗
Basil Kritzer