吹奏楽部などで教わる・言われることが多い、金管楽器のアンブシュアについてのことで、あなたの成長の邪魔になりやすいことについてだけ、触れておきたいと思います。
そうすることで、これをあなたが読んだときに、もし教わったこと言われたことを一生懸命やろうとしていて吹きにくいとか、逆に下手になってしまったように感じることがあった場合、解放されてもっと楽しく充実した楽器生活がまた始まる助けになればいいな、と願います。
《①プレス》
まずは、プレスのことです。
口にどういうふうにマウスピースをくっつけるか、ということですね。
『跡がつくのはダメ、押し付けすぎている』
→不正確です。跡の付き加減は、ひとそれぞれの肌の色や性質によってかなり見た目が変わります。跡がついているからといって、押し付けすぎているという判断はできません。
『押し付けるのはダメ』
→不正確です。たとえば、音楽科学研究者の平野剛先生の研究ではアマチュア奏者よりプロ奏者、プロ奏者のなかでも超一流のソリストが一番強くマウスピースを口に押し付けていたということが計測されています。押し付けないように気をつけているせいで高音が出ないとか、なかなか音が安定しないというひとがたくさんいます。
*提案*
◎押し付けないように気をつける
◎押し付けているかどうか、とくに気にしない
↓
どちらのほうが吹きやすいか、うまくいくか、比べてみてください。うまくいくほうでしばらくはやってみましょう。差がなければ、気にしないほうにしましょう。
《②見た目》
『あなたのアンブシュアはおかしい』
『あなたみたいなアンブシュアで上手なひとはいない』
こういう物の言い方をされたことがあるかもしれません。
これも、あまり真に受けないほうがよいと思います。
これを言っているひとの多くは、なんとなく見た目の雰囲気でしか言っていません。そのひとが見たことがないだけであって、たとえばYou Tubeでいろんなプレイヤーの動画を観てみると、いろんあ見た目のアンブシュアで、たくさんの優れたプレイヤーがいます。
《③ベル(マウスパイプの向き)》
『ベルが下向きすぎるから吹き方がおかしい』
『ベルが上向きすぎるから吹き方がおかしい』
どちらも、耳にすることがあるかもしれません。
これも見た目の話と似ていますが、それを言っているひとの経験の範囲内で言っているだけであって、正しくありません。
ベルの向きは、構え方や持ち方の都合や問題は別として、ひとそれぞれの顔の筋肉や骨の形などから決まってくる『そのひとにとっていちばんうまくいくマウスピースの当て方・吹き方』によってかなり変わります。
まったく正しい吹き方で、すごくうまくいっているひとでも、すごくベルが上向きになるひともいれば下向きになるひともいる。これが事実です。
あなたにとってやりやすいやり方、うまくいく吹き方を大事にしてください。
《④口が動いてはだめ》
これは、どういう意味で言っているかによって、正しいか正しくないかまるっきり変わります。
単純に言えば、口は必ず動きます。顎も動きます。
必要なのはその動きを訓練することです。
ただ、動きの種類によっては、それをやらないようにしたほうがうまくいくこともあります。
どういう意味で、どんな動きのことを言っているのかですごく変わるので、やはりあなた自身が比べて、あなたにとってやりやすく、うまくいく方を選びましょう。
漠然と、『動き過ぎていつんじゃないか、わたしはだめなんじゃないか、このままではうまくならないんじゃないか』という不安が起きてしまうようだったら、動いているかどうかということすら、そもそも気にしないようにしてください。
《⑤マウスピースを当てる位置》
・マウスピースがすごく上に当たっているひともいます
・マウスピースがすごく下に当たっているひともいます
・マウスピースがすごく横に当たっているひともいます。
どれひとつとして、間違った位置はありません。
マウスピースが当たる位置も、ベルの向きと同じで、ひとそれぞれの顔の骨や筋肉のつくりによって決まってくる割合がかなりあるとわたしは考えます。
そういったことを強く示唆する詳細な研究も、なされています。
みんながやるべき正しい位置なんてないです。
できればそうしたほうが良い位置というのもありません。
あなたにとってうまくいく位置はどこか、というのが大切です。
Basil Kritzer