タンギングの仕組みとタイミング

引き続き、金管向けのお話です。きょうは、タンギングと息の「タイミング」に関してです。

昨日はアンブシュアの形成に関して「役割分担」や「順序」を分解して意識化してみました。(参照:アンブシュア形成における「口を閉じること」の役割

同じようなアプローチをタンギングに関しても試してみて、気付いたことや感じたことをシェアしたいと思います。

タンギングというものがそもそも何をしているものなのかを単純に復習すると

①舌先が前歯の裏(上下どちらの歯かはひとによって異なるようです)に接することで息の通り道を塞ぐ。基本的に、舌先がちょこっと上に動くようなイメージです。
②息を吐き続けるので、その間息は溜まっていき圧力が高まる。
③舌先を降ろしてあげる(舌先を上げておくのをやめる/解除する)
④すると息が一気に流れ出すので、これがクリアな聴こえ方のする発音になる。

ということになります。

より詳しくはこちらの記事に書いてあるのでぜひご覧下さい
参照:連続タンギングがうまくできない…..どうしたらいいの?

きょう私が練習のなかで明確化したのは、この順序/タイミングです。

・舌先という「栓」がされて
・そのあと息を吐く働きがあって
・最後に「栓」を抜く=舌を降ろす(上げるのをやめる)

これを本当にちゃんと考えながら、順序を守りながら吹いてみたのです。

普段から、特に何も考えなくて吹けるしタンギングもできはするので、そこをあえて「意識化」する作業は、ほんと脳みそ使います。集中力が要されるので、「さらう」というタイプの練習ではなく、自分の演奏時術そのものの構築・チューニングのような作業です。

こういう作業は、「興味」や「関心」をベースに進めるのが大切です。漠然と「自分の吹き方は間違っているかもしれない」という気持ちからこういう細かいところを考え始めるとドツボにはまりやすいので、この稿を読んで不安を感じたが故に「やってみる」のであれば、たぶんやらない方がよいでしょう。

読んでいて「面白そう」あるいは「これを求めてた」「これは答えになるかも」と感じた場合だけ、ぜひ試してみてください。

何はともあれ、現実にはこういう仕組みになっているわけですから、その現実に対して「自分の考え」を意識的に沿わせるようにしながら吹いていると、やはりとても興味深い効果がありました。

以下、私に起きた変化です。

・F管の高音域でのタンギングを伴わせた発音だと普段は「雑音」がまじりがちなのが、すっきりした発音になった。唇がちゃんと「ポイントにはまる」ようになった。

・音が外れたとき、その外し方というか、外れるときの音が、私が大学で5年間師事した師匠であるフランク・ロイド教授の「外し方」と同じだった。

・高い音もより「見下ろせる」ような感覚に近付いた。

・いままでタンギング時にアパチュアを潰してしまいがちだったのが、だいぶ軽減され、結果的に唇のバテという点でもラクになった。

とくに2点目に関しては、やはり私が大きくロイド先生から影響を受けているが故なのだろうと思います。普段から考える奏法やアイデア自体も、ロイド先生の奏法・吹き方を間近で見て来た5年間が深く自分に影響している可能性も強いと思います。

とすると、ここで提唱している「考え方」とは異なる考え方ももちろん成り立つということです。ロイド先生と全く異なる奏法や個性を備えた素晴らしいホルン奏者たちが世界には多様に存在し、それぞれの「考え方」とそこから生まれてくる音色や個性や傾向があるからです。

さて、話がそれましたが、こういう「分解的」な練習は、「Must事項」ではありません。「自分のダメなところを修正する」という観点で使わない方がよいでしょう。

むしろ、漠然とした「謎」や「疑問」があるときに、「試しにそう考えながらやってみるとどうなるか」という「実験」として使ってみてください。

昨日のアンブシュアの話と合わせて、おさらい。

①演奏する音/フレーズを明確に決め、頭の中で歌う
②まず口を閉じて(普通に、ただ閉じるだけです)
③そこにマウスピースを付けて
④舌先が前歯の裏(上下どちらの歯かはひとによって異なるようです)に接することで息の通り道を塞ぐ。基本的に、舌先がちょこっと上に動くようなイメージです。
⑤息を吐き続けるので、その間息は溜まっていき圧力が高まる。
⑥舌先を降ろしてあげる(舌先を上げておくのをやめる/解除する)
⑦すると息が一気に流れ出すので、これがクリアな聴こえ方のする発音になる。

これをまとめて考えながらやるのが大変ならば、次の順に取り組んでみてください。

一日目

①演奏する音/フレーズを明確に決め、頭の中で歌う
②まず口を閉じて(普通に、ただ閉じるだけです)
③そこにマウスピースを付けて
④息を吐いて発音する

二日目

①舌先が前歯の裏(上下どちらの歯かはひとによって異なるようです)に接することで息の通り道を塞ぐ。基本的に、舌先がちょこっと上に動くようなイメージです。
②息を吐き続けるので、その間息は溜まっていき圧力が高まる。
③舌先を降ろしてあげる(舌先を上げておくのをやめる/解除する)
④すると息が一気に流れ出すので、これがクリアな聴こえ方のする発音になる。

三日目

①演奏する音/フレーズを明確に決め、頭の中で歌う
②まず口を閉じて(普通に、ただ閉じるだけです)
③そこにマウスピースを付けて
④舌先が前歯の裏(上下どちらの歯かはひとによって異なるようです)に接することで息の通り道を塞ぐ。基本的に、舌先がちょこっと上に動くようなイメージです。
⑤息を吐き続けるので、その間息は溜まっていき圧力が高まる。
⑥舌先を降ろしてあげる(舌先を上げておくのをやめる/解除する)
⑦すると息が一気に流れ出すので、これがクリアな聴こえ方のする発音になる。

最後に、息の吐き方や圧力については、私はそれはそれでこれまで考えてきたことを意識化しています。以下、参照記事を紹介しておきます。

・息の圧力の作り方

息を吐く力の牽引役としての「骨盤底」の話

・キャシー・マデン先生との学び2012「骨盤底」

・キャシー・マデン先生との学び 2012「タンギング」

・キャシー・マデン先生との学び備忘録 2011 「骨盤底」

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タンギングの仕組みとタイミング」への6件のフィードバック

  1. こんにちは。トロンボーンを吹き始めて1年になる高1のものです。ちなみに中学ではアルト&ソプラノサックスを3年間担当していました。このことをわざわざ書いたのは今から聞きたいことが木管と金管では違うのかどうかを聞きたいからです。

    私は今の今までタンギングをするたびに唇をいちいち閉じていました。つい最近それにきづいたのですが・・・

    やはりアパチュアは常に開いたままのほうがいいのでしょうか。タンギングをするときいちいち口を閉じていては唇に無駄が出来てバテやすくなるのでしょうか。仮にアパチュアが常に開いたままなのが正しい奏法なら、どうすればいちいち唇がタンギングをするたびに閉じなくなるでしょうか・・・

    木管は自分の唇を直接的に使うわけではないのでどうすればいいのかわかりません。

    どうか教えてください。

    • はじめまして。アパチュアは作ろうと思って作れるものではなく、閉じてある唇を息が押し開ける事で「生まれる」ものです。ですので、①口を閉じておく(閉じ続ける)②息を出し続けることを意識するとよいかと思います♪

      • ありがとうございましたm(_ _)m
        この度パートリーダーをさせていただくことになりました・・・トロンボーン暦はたったの一年足らずですが頑張りたいと思います。

        ありがとうございました!!!

  2. Tuba歴3年半になる高校生です。自分は奏法について全く知識が無いもので、練習では良い音のイメージを作り、リラックスして息を出してイメージしている音に近づけようとしています。

    そこで最近気にし始めているのが「のどと頬の膨らみ」です。楽器を吹き始めた頃からずっとそうなのですが、リラックスすればするほど膨らむのです。のどを広げるのはあまり良いことではないと聞いたことがあり何度も直そうとしたのですが、のども頬も意識して膨らませているわけではないので直せたとしてもすぐに膨らみます。
    ただ、果たしてこの癖は直すほどの悪い癖なのだろうか、と思うこともよくあります。

    分かりづらい文章で申し訳ありませんが、こういったことは直すべきなのでしょうか?また、どのようにして直すのかも教えて頂ければ幸いです。

    • はじめまして。

      のどと頬の膨らみに関して、実際に貴方の演奏を見ない事には何が起きているか、どうしたっていったらいいか分かりませんが、一般的に言えることをここではお答えしていきたいと思います。

      実は、いくつか言えることがあります。

      ①全く問題ない可能性もある

      のどや頬が膨らんでいても、まったく問題ない場合があります。

      とくにトランペットやホルンなどマウスピースが小さい楽器に関しては、演奏すているときに喉や頬が膨らんでいるが全く問題なく素晴らしい演奏をするプレイヤーがたくさんいます。

      チューバの場合、頬の膨らみは本当に多くのプレイヤー、私の印象ではプロのプレイヤーの半数以上でごく普通に見受けられますから、頬のふくらみを解消したほうが明らかに確実に演奏が向上する場合を除いて、直そうとしない方がよいのではないか、と思います。

      ②顔をマウスピースに近付けていくときに、股関節を使えていない可能性がある

      多くのひとが、股関節(座っている場合、イスから10センチくらいの場所にあります)の存在を忘れたり、あるいは股関節を動かさなくなってしまっています。

      その結果、わたしが「ニセ股関節」と言っている場所、胴体の真ん中やウエストのあたり、あるいは首から身体を曲げることをしてしまっていることが多いのです。

      のどの膨らに関しては、その可能性があります。

      というのも、顔をマウスピースに近付けていく際、股関節を使わずに、ニセ股関節や首ばかりでまかなおうとすると、胸郭や気道のあたりがぐにゃっと曲げられていて、たくさんの息を吐くときになかなか息が通りにくくなっていることが多いのです。

      そのせいでのどが膨らんでいるケースをこれまで何度か見たことがあります。

      楽器を構えて、口をマウスピースに付けるとき、股関節から胴体をまるごと一個で動かすような意識で吹く体勢をととのえてみるようにしてください。

      股関節の発見方法、エクササイズについてはこちらをご覧ください
      → 『背スジを伸ばしなさいは禁』http://basilkritzer.jp/archives/346.html

      また、9月5日に学研より『バジル先生のココロとカラダの相談室〜吹奏楽部員のためのアレクサンダーテクニーク〜』楽器演奏編&メンタルガイド編を発売します。

      その楽器演奏編において、楽器別アドバイスを書いています。チューバもありますので、それもとても参考になるかと思います。

      『バジル先生のココロとカラダの相談室〜吹奏楽部員のためのアレクサンダーテクニーク〜』楽器演奏編
      http://www.amazon.co.jp/吹奏楽部員のためのココロとカラダの相談室-楽器演奏編-今すぐできる・よくわかる-アレクサンダー・テクニーク-バジル・クリッツァー/dp/4058001526/ref=sr_1_2?s=books&ie=UTF8&qid=1376874861&sr=1-2

      • また、ひょっとしたら、「リラックス」を徹底し過ぎている可能性も関係しているかもしれません。

        リラックスしようと考えるより、「使いたい力を好きなだけ存分に使おう」という意識の方が、矛盾なく楽しく前向きに練習しやすいように思います。

        お腹の力、ドンドン使うといいですよ!
        参照→『息の圧力の作り方』http://basilkritzer.jp/archives/995.html

        ぜひ試してみてください。

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