アマチュアトランペット奏者のAさんより、仲間のホルン奏者の悩みについてご相談を受けました。
【質問】
所属オケでR.シュトラウスの「ドン・ファン」を演奏するのですが、
昼間部の静かな部分でホルンにゲシュトプフトのsfzが出てきます。
指揮者はそこで露骨に金属的な響きを要求しているのですが、
2nd奏者の女性がゲシュトプフトの経験がなく、また手も小さいので
うまく演奏できません。
とりあえず半音下がる程度の「ハーフ・ミュート(ハーフ・ストップ)」を
その場しのぎで教えたのですが、ゲシュトプフト本来の金属的な響きには
まだ遠いので、手が小さめの女性でも「らしい」ゲシュトプフトの音が
出せるためのコツがあれば教えていただけませんでしょうか。
【回答】
お悩みのその方には、こちらの記事が役立つかと思います。
「小さい手でも、ゲシュトップはできる」(記事は抜粋して以下にも掲載)
この記事中の考え方+ゲシュトップのときはアンブシュアをちょこっと頑張らせるというか、いつもよりアンブシュアの仕事量を増やすと、うまくいきます。
ぜひその方にお伝え下さい。
(以下、記事抜粋)
中高生を教えていると、「手が小さくてうまくゲシュトップができない」という相談を受けることがよくあります。
気持ちはよくわかります。手が小さいと、一見十分にベルを塞げないような気持ちがします。
手や身体が小さいことがゲシュトップのハンデとなるなら、つぎの理由が考えられます。
①手が小さいと、ベルの出口をきつく手で密閉できない。
②身体が小さいと、ゲシュトップに必要な大量の息を吐けない。
でも、上記の二点が「絶対必要」でないとしたらどうでしょう?
実はぼく自身、身体や手が小さいわけでもないのにゲシュトップがうまくできなかった頃は、上記二つの考え方をしていました。
いまは、異なる方法をとっています。
A:手は、ベル出口にかるく「かぶせる」ような感じ。
B:息は、(ペダル音域は例外かもしれないが)必ずしも大量に思いっきり吐こうとはしない。どちらかというと、手によって増えた抵抗をよく感じてそれに合わせる程度。
中高生を指導するとき、持ち方/腕の使い方(詳しくはこちら)の指導の中で全般的に腕の動きやホルンの支えが自由で効率的になっていますから、それもあって効き目があるのかもしれませんが、
「手を奥に突っ込む」「密閉する」という考え方を『柔らかくかぶせる』に変えてもらうと、かなり簡単に、これまではできなかったゲシュトップができるようになるケースが多々あります。
また、「ゲシュトップは息をたくさん使うもの」とどこかで教えられていたり、あるいは「うまくいかない→もっと頑張る(キバる/力む)」というお決まりのパターンの結果、一生懸命吹きこもうとしすぎていてうまくいってない場合もよく見かけます。
そういうときは、手をかぶせたときにどれくらい抵抗感が変わるか、息だけ入れて感じてもらいます。そして、「その抵抗感をよく感じながら吹いてごらん」と言うと、それだけでゲシュトップがうまくいくケースがよくあります。
それだけでは足りない場合、手をかぶせた状態で、タンギングせずに息を少しづつ音に換えてもらう(ブレスアタック/リップアタックという呼び方があったでしょうか?)実験をします。その際、唇にかかる抵抗感の変化をよく感じてもらいます。
すると、唇がゲシュトップ状態に自然と適応してうまくいくケースがよくあります。
人によっては、吹いてみせて、「なんとなく全体を見て、印象を真似してごらん」と実験してみると良くなる場合もありますね。
周辺にゲシュトップで苦労している人がいたら、ぜひこのアイデアを紹介してあげて下さい。