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新訳:Singing on the Wind です。前回はこちら
【スラーすること】
ある音から次の音へとスラーをするとき、聴いてすぐ分かるような音の切れ目は無いようにするべきです。
これは、3つの事柄から成立させることができます。
・スラーを実行する間、アンブシュアが振動し続ける
・ひとつ目の音から次の音へと、息のサポートによる「運搬」が続くこと
・心の中の耳で、演奏する二つの音程が奏でられていること
本物のスラーとは、ふたつの音の間のグリッサンドなのですが、二つのはっきり聞こえる音の間の音または自然倍音は聞こえない、そういうグリッサンドなのです。
スラーすることは、自然倍音でオクターブのスラーを奏でることで練習することができます。
その際、オクターブ間の自然倍音が全て、グリッサンドのように聞こえるように奏でるようにします。これが、スラーをしている間にアンブシュアの振動を継続させることを促します。
徐々にそのグリッサンドのスピードを上げていくことで、ひとつ目の音と二つ目の音の間の自然倍音が聴いていてわからなくなるようなところまでスラーを発達させていくことができます。
グリッサンドを奏でるとき、ひとつ目の音から二つ目の音へと移る間、息で音を「運搬する」ことが大事で、これはアンブシュアと息の効率的なバランスを維持するためです。
このことは、より高い音程へとスラーするときが特に理解しやすいです。高い音の方が息のスピードが増す必要があるからです。
しかしながら、高い音から低い音へとスラーするときもやはり、息のサポートは大事です。音が「落っこちて」しまうようなことになるのを防止できるからです。
・オクターブのグリッサンドを、上へ下へと声で歌ってみましょう。できるかぎりオープンな声で。最初はゆっくり、後から速く。後で楽器でやる前に、声の質と音量を息を使って保ちながら。高い音を当てるために弾みをつけて勢いで出してしまわないように、気をつけましょう。息のスピードの増加がコントロールされておらず、不必要な緊張を作ってしまうからです。
・これから演奏する二つの音程の距離、なかでも二つ目の音は、その音に向かってスラーで進む前に心の耳であらかじめ聴き取っておくべきです。そうすることで、スラーをかけている間にアンブシュアが必要とされる形へと効率的に適応できるようにするためです。
・より高い音へスラーして上がるとき、下の音も上の音も正しいアンブシュアと中心の定まった音で奏でることが大事です。下の音を奏でるときは、その音を単音で奏でるときと同じアンブシュアで、スラーのときも奏でましょう。高い方の音へスラーで上がるときも、上がったその音を単音で奏でるのと同じアンブシュアに移行するようにしましょう。
心の中で上がった高い方の音の準備をするとき、下の音において必要以上の力を使ってしまう危険があります。つまり、下の音を、高い方の音のアンブシュアで吹いてしまうということです。
その結果起きる緊張は、上がった高い方の音を必要以上にキツいものにしてしまい、下の音も上がった方の音も音質が損なわれます。
あの有名な、ラヴェルのピアノ協奏曲のハイCから始まるソロのように、すでに高い音から、さらに高い音へとスラーするようなとき。
そういうときは、スラーして上がるタイミングで意識的にアンブシュアのアパチュアを開き、下顎を少し下げるとうまくいかせやすいことがあります。
これをすると、その後の高い音のためにアパチュアを小さくするためのスペースを作ることができるのです。
唇の張りの弛緩とアパチュアの開きは、息圧の増大によってカバーすることになります。
こうすることが、高い方の音のためにアンブシュアの張りが強くなりアパチュアが小さくなるときに、適切に音を上げることを助けます。
ウェイトリフティングの選手が、一旦ウェイトを胸のところまで持ち上げあとにちょっとのあいだ力を抜き、ウェイトを少しだけ下げてから一気に頭の上へと持ち上げる様子とイメージが似ています。
スタートのハイCを安定して伸ばしておき、ハイCの最後のところでアンブシュアを緩め開いてからハイFへと音を持ち上げるのです。
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続く
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