姿勢
まず楽器を持たずに座るか立つかしてみる。何時間か重いリュックを背負って歩き回っていたと想像してみて欲しい。目的地に着いてリュックを降ろす。肩にかかっていた重さから解放されたときの感じを想像してみよう。背中が伸びて、肩がリラックスして、頭が持ち上がる。ここで、身体との関係での頭の「バランス」を観察してみて欲しい。頭の「位置」や「保つ場所」ではない。「バランス」とは動きのバランスと自由度を意味する。そういうわけで「リュック降ろしたあと」の頭のバランスを観察する。姿勢がリラックスしていると同時に活性化しているだろう。
ここで両手に楽器を持ち、頭の上に頭のバランスと活性化された姿勢を観察しながら掲げてみる。
頭のバランスを活性化された姿勢を続けながら、アンブシュアのところにマウスピースが出会い、腕が開放的にバランスをとって楽器を持っているようなところへ楽器を下ろしていく。自動的にいつもの演奏のポジションをやってしまわないように、よく気が付いておこう。
この開放性がどんな感じがするか観察し、「いつも通りに」楽器を構えている場合とを比較してみよう。比較によって、よりリラックスした効率的な演奏の姿勢を見つけていくことができる。
楽器はそれなりの重さがあるのだから、休んでいるときは楽器を下ろして置いておけばよい。しかし演奏をするために次に楽器を持ち上げる際、私たちは頭を下に動かしてマウスピースへ接触させるとう動きになりがちだ。これをやっていると、頭をと首を前へ押し付ける原因になり、場合によっては胸を崩してしまう。頭がバランスを得て活き活きとしたやり方で座ると、健康な演奏の姿勢を確立する助けになる。楽器を自分の方へ動かすようにしよう。自分が楽器の方へ行ってしまうのではなく。すると健康な姿勢を続けやすくなる。
不必要な緊張は演奏に害となる。「姿勢を保つ」という考え方は「固定」になってしまいやすい。固定を続けることは、固定された位置を保つ為に拮抗する反対の作用の筋肉同を使うことになる。できれば必要な筋肉だけを使うことを狙いとして、他の筋肉はリラックスしたままにさせてあげよう。開放性、バランスそして柔軟性を目標としよう。柔軟であり続けて動き続けることは、筋肉が仕事を分配し合って身体がバランスを得るようにしてくれる。
『身体の関係においての、そして動きの中での人間の頭の「バランス」は、自由さと動きの容易さの
鍵である』 ?ドナルド・L・ウィード著「What You Think is What you get」より
訳注:
ドナルド・ウィードは現在世界でも優れたアレクサンダーテクニーク教師のうちのひとり。著作は英語。ドイツ語の訳は存在するが日本語訳はなされていない。
Singing on the Wind 目次
チュリーヒ・トーンハレ管弦楽団ホルン奏者、ナイジェル・ダウニング氏。彼のいわば「練習の秘訣決定版」とも言える著作『Singing on the Wind』の訳を半年かけて終えました。 そのダウニング氏が、いまオケのツアーで来日しています。 ツアー中、なんと東京芸大で彼のセミナーが実現しました。 事前にコンタクトを取っており著作の訳をしていて、お互い同じアレクサンダーテクニークの先生に習ったという共通点もあり、私が通訳を担当しました。 当日は芸大のホルン科をはじめ数多くの将来有望な学生さんが参加して下さいました。 その著作『 Singing on the Wind』要約版を著者の許可の元翻訳し、公開します。フルバージョンの書籍はアマゾンで購入できますが、現在英語・ドイツ語のみです。 Singing on the Wind ー目次ー はじめに 1:息にのせて歌う 2:練習の黄金則 3:姿勢 4:音を奏でる 5:プランA・B・C 6:歌う事について 7:プランA 8:プランB 9:プランCーその1 10:プランCーその2 11:健康にご注意 12:まずはスラーその1 13:まずはスラーその2 14:自然倍音を用いたエクササイズ 15:分散和音 16:結論