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アマチュアホルン吹き男性との初レッスン。
音色や奏法が不安定に感じるとのことで、演奏予定のある吹奏楽曲の中のソロのフレーズを会社に実際どうなっているかを見せてもらった。
すると、幾分、表記されているより小さめに音を出している。体格はかなり良いので、音量そのものはきっと出せるはずだ。
そこでかなり小さめに吹いていらっしゃいますね?と尋ねてみると、以前に音がうるさいと言われたことがありそれを気にしていたかもしれない、とのこと。
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バジル
「それは、このような穏やかな音が大きくないフレーズで言われたんですか?それとももっと鳴らすフレーズの時に言われましたか?」
男性
「大きいフレーズの時です」
バジル
「それじゃあ、このようなフレーズの時に抑える必要はないわけですね」
男性
「確かにそうですね」
バジル
「一度大きめに吹いてみてください」
男性
「. . .(吹く). . . 吹きすいですね」
バジル
「その時の吹いてる感覚と、うるさいと言われたことを気にして吹いている時の感覚を比べてみてください」
男性
「今の方が息を押し上げてる感じがあります」
バジル
「ではこうしてみましょう。息を押し上げながら音量を望んでるような小ささにコントロールしてみよう、と考えて吹いてみる」
男性
「なるほど. . . (吹く). . . いままでで一番いい感じに音も吹き心地もなりました!」
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良い感じに演奏できた、その体験が得られたところまで来て振り返ってみると、うるさいと過去に言われたことを気にしている時というのは、息の押し上げ、つまり空気を体外に排出する力のかけ方をしないようにしないようにコントロールしていたと、いうことだ。
これはすなわち空気が体外に出ていかないように・息が流れないようにする操作であり、唇が振動しにくくなる。音が不安定になって吹き心地が良くないのは、そういう構図があったからだ。
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今回面白かったのは、息の押し上げ=空気を体外に排出していく動作を確保しつつ音量を抑えるコントロールをするということを、そのコントロール方法を具体的に説明したり教えたりすることなく、できたことだ。
息の押し上げ=空気の吐き出しはすでにできているのだけど、うるさいと言われた過去を気にするとやりそびれてしまった。ゆえにうまくいかなかった。その構図の中に、できるのにやっていなかった「息の押し上げ」を入れた。
音量を抑えるとうまくいかない状況なのに、抑える方法ではなく息を吐く方法である「息の押し上げ=空気の吐き出し」を確認して用いたら抑えた音量がうまくいった、それはつまり、どんな音量でもそれこそが基礎的土台であったということだ。
その土台を確保したら、音量を下げるコントロール(胸か腹を膨らませたまま保つ)については、本人が既にやり方を知っていたのか感覚的に何となくわかっていたのかその場で無意識的に見つけたのかは定かではないが、いずれにせよちゃんとできた。音量下げコントロールの動作を、「息の押し上げ=空気の吐き出し」という土台に上乗せして実行できたのだ。
多くのひとが、音量を抑える時には、息を吐かないように吐かないようにすることをやってしまいがちだ。でもそれだと振動が起きなくて音が出なかったり、不安定になったりする。
どうすればいいか?
しっかり吐きつつも音量を抑えるには、胸か腹を膨らませたまま保つということを、しっかり吐くことに上乗せしてプラスすれば良いのである。
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《腹式呼吸の場合》
土台=胸の圧迫=息の押し出し
上乗せ=お腹の張り・膨らまし=音量下げコントロール
感覚的には
「お腹を膨らませながら息を思い切りたくさん吸い、膨らんだお腹をつよくしっかり張るように力を入れておく。すると、小さい音も体の感触として頼りない感覚にならずに安心して発音し奏でていける」
注意点
「息を吸って腹を張る力につられて、のどを力ませないように」
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《胸式呼吸の場合》
土台=お腹の凹ませ・絞り=息の押し出し
上乗せ=胸の拡がり・膨らまし=音量下げコントロール
感覚的には
「胸を拡げ肩を持ち上げながら息を思い切りたくさん吸い、拡がり持ち上がった上半身を積極的にそのように保つ。あとは勇気を持って普通に音を出してしまおう。すると、小さい音も体の感触として頼りない感覚にならずに安心して発音し奏でていける」
注意点
「上半身の拡がり持ち上がりにつられて、のどを力ませないように」
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このように整理できるだろう。
Basil Kritzer