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半年ほどレッスンに通ってきてくださっている、ベテランのアマチュア女性ホルン吹き。
当初は音も口元も揺れることが多く、音域のコントロールもかなり難しい状況だった。
それが
呼吸、
構え方、
姿勢、
アンブシュア、
練習のやり方
ひとつひとつ整理していくにつれて、かなり改善向上し、最近は仲間に変化を気付いてもらえることも出てきたとのこと。
この方とのレッスンで繰り返し浮び上がってきているのは、『自分で考えることより、他人に言われたことを鵜呑みにしてきたホルン人生だった』というテーマ。
レッスンでは現状を見て、どのような吹き方・身体の使い方をしているかを見て、困っていることが改善したりやりたいことがよりできるようなことが起きるように具体的に色々試していく。
例えばそのひとつがマウスピースを口に当てる位置で、外から見る分にはわざわざそれに着目しないと分からない程度の小さな位置の修正をしてかなりアンブシュアが安定したのだが、その修正が少し右よりへの移動だった。
そのときにご本人の口をついて出た言葉は、
「マウスピースは真ん中に当てるべきだと言われてきたから、とにかくそれだけ考えてやってきた。だからちょっと横にずらしてこれだけ良くなるなんて思いもしなかった!」
とのこと。
こういうことが、マウスピースの位置だけでなく、先述の諸側面それぞれに毎回出てくるのだ。
そして直近のレッスンでは、何かうまくいかないことがあると、
1.
うまくいかなかったことをとっさに直そうとする
↓
2.
その方法は、過去に言われてきたことを検索して片端から当てはめようとする
という内面的プロセスがいつも作動していることが対話を通じて浮かび上がった。
教わってきたこと、
言われてきたこと、
読んだこと、
それらは、いずれも価値や有用性がある可能性があるのだから、それを活用しようとするのはもちろん何一つ間違いではない。
しかしこの方の場合、教わったこと言われてきたことをやって、『それが自分に役立っているかどうか』という判断をしてこなかった側面が強かったのだ。
また、この方の場合は教わってきたこと言われてきたことのいくつもが、それを教えたり言ったりしてきた人たちが、この方の状況を分析したものでも、この方にとっての効果や有用性を確認して伝えたものでもなかった。
それでも、教わったから・言われたからというだけで全て受け入れ、守り続けてきた。その結果、長く不調に苦しんでこられた。そういう構図があったわけだ。
そこでお話したのはこんなことだ。
『○○さん、一度こうしてみましょう。たとえばBb音階を吹いて頂くとして、
「この音階を吹くのに、わたしがする必要があるとわたし自身考えることはなんだろう?では、それをやってみよう」
という発想で吹いてみるのです。
やってみることは、ご自身で考えたこと、ぼくとのレッスンで得たこと、過去に教わったこと、全部なんでもOKです。
でもご自身の意志のもと選んで、実行してみるというところがミソです。』
・
・
・
そして、次にこの方が音階を演奏されたとき、半年のなかで断然に安定した、豊かな音で音階が奏でられた!
そのとき、外から見ていて身体の動きなどにそれまでと明らかな変化があるようには見えなかった。
でも、明らかにこれまでにはない結果が生み出され、本人もこれまでにない納得と手応えを感じたとのことだった。
次のレッスンまでに、吹くときはできるだけずっと、このような『自由意志選択』をすることを目標・宿題としてやってみることを提案し、合意した。
次にお会いするのが楽しみである🤗
BasilKritzer