【プロオーボエ奏者の呼吸法の悩み】

プロのオーボエ吹きの方からメール相談を頂きました。

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【質問者】
いつもYouTubeで楽しく拝聴させて頂いております。メルマガも大変興味深く、毎日試行錯誤をしております。

私はオーボエ奏者ですが、長年いわゆる”腹式呼吸”で、上手くいっていた為、あまり自問自答せずここまで来ていましたが、長いフレーズを吹くときなど、度々、喉の詰まりが気になっていました。

フレーズの最後に喉のサイドに息が溜まって(詰まって)きてしまうような感じです。それによって無理に響かせようと音を押してしまったり、vocalがうまく使えなかったりすることが悩みです。

先生の仰る、“喉の力み”ではないかと思い、肺でたっぷり息を吸って、お腹を凹ませる呼吸を意識して練習していると、喉の詰まりを感じることが徐々に少なくなっていき、響きも増してきたように思います。

ただ、これまで使っていた”支え”を使わなくなったことにより、背中が痛くなったり、腰が痛くなったりするようになりました。

今までの奏法では、身体に痛みを感じることはありませんでしたが、喉の詰まりを感じ、練習中の新しい奏法では、喉は楽になるが身体が痛くなる。という現状で、負荷をかける場所が違っている状態ではないかとバランス探し中です。

お時間ある時にでも構いませんので、何か気をつける要点が有りましたら、ご返答頂ければ幸いです。

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【バジル】
こんばんは。この度はご質問のメールを頂き、有難うございます。

まず、元々感じておられていた喉のつまりが元々されていた腹式呼吸が原因なのかどうか?というクエスチョンがあります。

呼吸法を変えたら喉のつまりが取れたとのことなので、その可能性は十分ありそうですが、肺呼吸をしたから喉がつまらなくなったのであって、腹式呼吸のせいでつまっていたとは限らない、つまり肺呼吸の不足という原因も論理的にはあり得るかな、と思いました。

なので、アイデアとしては、

『肺呼吸+腹の支え』

はできるか?ですか。

仮にこれが可能だった場合、それにより

・喉の詰まりが取れて
・背中の痛みは生じない

という結果になるか、というのを試してみて下さい。

これがダメだった場合、それは

複合ができない
=共存できない呼吸法である

複合はできたけど喉がつまる
=腹の支えがやはり喉つまりを起こす

複合はできたけど背中は痛い
=肺呼吸のやり方もしくは腹の支え以外の支え方が痛みを起こす

複合はできたけど喉はつまるし背中も痛い
=上記両方の問題が重なる

ことを意味しています。

肺呼吸モードの痛みは、

・慣れの問題にすぎない
・肺呼吸のやり方に原因
・腹の支えをやめた代わりの支え方に原因

のいずれかが考えられます。

3つ目の支え方については、『身体の軸』で支えることが代わりとして良い可能性が考えられます。

片足立ちをしながらちょっと動いたりストレッチしようとしたときに感じる身体の支え方を意識してそれを肺呼吸モードのときに使うとどうなるでしょうか?

これでもとくに手応えがなければ、吹いておられる様子の動画を見せて頂ければ何かもっと具体的に分かるかもしれません。

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【質問者】
お忙しい中、迅速なご返信、どうもありがとうございます。大変失礼ながら、情報を整理するのに時間がかかってしまい、お礼の返事が遅くなってしまい申し訳ございません。

アドバイスを元に推測してみたのは、これまで、吸った時に膨らんだ肺(腹)を更に外側へ向け押し出すようにし、それをキープし続けて吹こうとしたことで、本来の呼吸のメカニズムとの抵抗が生まれ、喉の詰まりを引き起こしていたのではないかと推測しました。

またそれを”支え”と考え、特にpや低音の演奏に活用してきた為、『肺呼吸+腹の支え』は可能かという問いには、そもそも”支えとは…???”という疑問に到達してしまいました。

背中の痛みに関しては、吐く時に、無理に絞り出すような圧のかけ方をしていて起きたのではと推測しています。

呼吸時の横隔膜と腹筋のメカニズムを意識して、痛みを感じず吐けたときというのは、確かに楽ですが、支えられている実感がないので、なんだからふらふらしているように感じ、大丈夫なのかな?という体感です。

吐き方に関しては、ダイナミックが違う場合はそれぞれどう変わるのか、その際の”支え”はどこで感じるのか、など、もう少し研究が必要だと感じています。

お忙しいとは存じますが、以前撮った動画がありますので、お手隙の際にでも聴いて下さい。

***
【バジル】
動画拝見しました。この動画で見る限りは、何か無理をして演奏されている様子っていうのは本当に少しだけな印象です。音も非常に綺麗になっていますし体も基本的には柔軟に使っていらっしゃるなあ、と。

以下、この動画で見たところからいくつかもしかしたら試せるかもという案を書いてきます。

一つは足を揃えて平行にしていらっしゃるようですが、これがかなり意識して大事にされて意図的にやっていることだったとしたらあえて、そのポリシーを緩和めてみるとどんなことが起きたりどんな感じがするでしょうか?

実は見ていて、何か骨盤周りのことで緊張があるなぁと感じています。その原因なのか結果なのかがわからないのですが、足の使い方が関係はありそうだな、と。

逆に足の使い方があくまで結果に過ぎないとしたら、骨盤の動かし方使い方に関するイメージか、もしくはもっと無意識的なボディマッピングの領域に関係するところがポイントになっているかもしれません、

伝わるかどうかわからないのですが骨盤を寝かす・後ろに倒していらっしゃるような印象があります。そのような意図とかイメージはお持ちであったりしますでしょうか?

何か考えていらっしゃることの中にヒントがあるかもしれませんし、もし骨盤の辺りのことは全く無意識ということであれば上述のようにボディマッピング的な情報が役に立つかもしれません。

実際にレッスンでお会いしたらそのときにも扱うことになるかもしれませんが、それまではまだしばらくこうしてメールをやり取りしていても書いてくださることの中から私も何か気づくことができるかもしれませんので、ご面倒でなければどうぞ何でも書いてみてください。

>>アドバイスを元に推測してみたのは、これまで、吸った時に膨らんだ肺(腹)を更に外側へ向け押し出すようにし、それをキープし続けて吹こうとしたことで、


これ自体は空気の流れ方にブレーキを掛けてコントロールする息の支えとして基本的に合っていると思います。もしかしたら肺を外側に押し出そうとする時それを胸や肺の内側の方の力でやろうとしているのかもしれません。そんな感覚イメージはありますか?

もし仮にそうだとしたら、実は肺を広げるのは肋骨の外側についている筋肉です。胸の筋肉だったり、首から肋骨の上の方に繋がっている筋肉だったり、色々あるのですが、外から引っ張られて外に肋骨が広がりそれにより肺が広がっていく仕組みになってます。

もし合致していれば内から押し広げようとするのをやめてみるとどうなるでしょうか。

>>『肺呼吸+腹の支え』は可能かという問いには、そもそも”支えとは…???”という疑問に到達してしまいました


腹の支えは、吸ったときに膨らんだお腹を膨らませたままにしたり、追加で膨らませたりすることです。

肺呼吸でも息を吸うときお腹は膨らむので、息を吸うときに肺呼吸、音を出すときに腹支えができます。

説明されてみて、どんな感じがしますか?

***
【質問者】
ご返信頂きありがとうございます。お忙しい中、動画まで見てくださり、大変嬉しく、感謝しております。

>>もしかしたら肺を外側に押し出そうとする時それを胸や肺の内側の方の力でやろうとしているのかもしれません。そんな感覚イメージはありますか?


大変抽象的で申し訳ありませんが、吸った時に膨らんだお腹を更に外に押し出そうとするとき、うーっという、気張る感覚があります。楽器を持っていない状態でも、気張ると、腹だけでなく、喉サイドにも圧を感じ、詰まる感覚があります。

この圧を意識的に喉周辺には上がってこないように、腹だけで行えるようにしたのが、支えということなのでしょうか?

ご指摘頂いた通り、骨盤周辺が、張るような、柔軟ではないなというのは感じていました。骨盤を意図的に後ろに倒したものではなく、無意識にそうなっていたと思います。

足に対しては、膝を曲げようと意識することはありますが、それ以外には特にアプローチしたことはないです。

お腹を膨らませたままにしたり、追加で膨らませたりするのが支えである時、 YouTubeに上げられているいくつかの動画のなかで、吐く際にお腹を凹ませると仰っていましたが、あれはどういった効果を狙ったものなのでしょうか。

どちらの動きも、同じ腹筋をそれぞれ相反する方向へ使っているものだと思うのですが、私自身、吐く際に常に支えがいると考えているので、自分の中で辻褄が合わなくなってしまいます。

私は何か誤解していますか?

色々と情報が混同してしまってすみません。ご教授頂けますと幸いです。

***
【バジル】
これでだいぶいろいろ見えてきました。

>>吸った時に膨らんだお腹を更に外に押し出そうとするとき、うーっという、気張る感覚があります。楽器を持っていない状態でも、気張ると、腹だけでなく、喉サイドにも圧を感じ、詰まる感覚があります。


なるほど、いきみになっていますね。

いきみは端的に言えば、息を吐かない状態です。
支え過剰、または吐き出し不足のバランスといえます。

また、いきみは体の圧力をリード方向ではなく下向きにかけている状態で、息圧として利用しやすい面はあるのですが、リードに向かう息は弱めている面があるのではないかと、現時点ではわたしは考えています。

>>この圧を意識的に喉周辺には上がってこないように、腹だけで行えるようにしたのが、支えということなのでしょうか?


喉がラクな状態で、いきまずに吹くことはどんな支え方でも正しい、もしくは望ましいと定義するのはかなり便利だと思います。

>> ご指摘頂いた通り、骨盤周辺が、張るような、柔軟ではないなというのは感じていました。骨盤を意図的に後ろに倒したものではなく、無意識にそうなっていたと思います。足に対しては、膝を曲げようと意識することはありますが、それ以外には特にアプローチしたことはないです。


このあたりは、対面もしくはオンラインレッスンでカバーするとスムーズですが、このやりとりが続けば引き続きいくつか質問させてもらうと思います。

効果があるかわかりませんが、骨盤の骨というものについて、ビジュアルでよいので調べてみて、大きさ、形、角度などをご自身の骨盤に触れたりしながらちょっとイメージを丁寧に作ってみて、意識したあとにすぐ一回忘れてすぐ吹いてみるとどうなるでしょうか?

>>お腹を膨らませたままにしたり、追加で膨らませたりするのが支えである時、 YouTubeに上げられているいくつかの動画のなかで、吐く際にお腹を凹ませると仰っていましたが、あれはどういった効果を狙ったものなのでしょうか。


お腹の筋肉は、呼吸においては基本的に吐く筋肉で、働くと凹むんです。つまり、内側上方向へ力がかかります。息を外に押し出す力です。

効果というよりは、自然かつ基本なんですね。
その基本に則ってみているだけとも言えます。

ふくらませる支えは、吐く力や勢いに対しブレーキをかけます。減速減量の方法なんです。そして、それは基本的には腹筋ではなく横隔膜で行われています。

腹筋でもできるかもしれませんが、息を吐く力としての腹筋は尚更働かなくなると思います。

>>どちらの動きも、同じ腹筋をそれぞれ相反する方向へ使っているものだと思うのですが、私自身、吐く際に常に支えがいると考えているので、自分の中で辻褄が合わなくなってしまいます。私は何か誤解していますか?


ここまで、

◎支えは吐く働きでなく吐かないようにする働き
◎お腹の支えは腹筋ではなく横隔膜でやっている
◎腹筋は吐く働き(凹む)

と説明しました。
対して、なんとなくのイメージも含めて

★支えは吐く助けもしくは基本
★お腹の支えは腹筋
★凹むのは良くないor好きじゃない

という捉え方だったのではないでしょうか。

状況としては

・いきみ
・支え過剰
・吐き出し不全

になっているようなので、そうだとすれば

『支えは横隔膜で』
『お腹は張るにしても腹筋を固めずに』
『お腹を張っていても凹むような動きや力を感じてもOK』

という合言葉で吹いてみるとどうなるでしょうか?

***
【質問者】
とても丁寧に解説して頂き、ありがとうございます。

支えは吐く働きでなく吐かないようにする働き。というのは、なるほど、完全な盲点でした。

支えは横隔膜で、吐くのは腹筋ということは、フォルテや、息にブレーキをかけず吹き込みたい時に、腹筋の使い方が、今までとかなり変わる気がします。そういった場面では、意識的に凹ませようとしていますか?それとも、凹んでいく感覚がある。くらいでしょうか?

フレーズの頭から喉の詰まりを感じることは、これでなくなりましたが、終わりの方や息がなくなってくるときに、また詰まりが出てきます。これは、どういった現象が起きているのでしょうか。

重心が上がってこないようにしようと意識していたので、骨盤が後傾することへ繋がったのかもしれません。身体の重さが骨盤を通じて足に伝わることを理解すると、無理に重心が上がってこないように意識することがなくなり、自然に感じられます。

拝見させて頂いたYouTubeの動画のなかに、骨盤を少し動かしてみてから吹いてみるものがありました。そのウォーミングアップのあと吹いてみると、胴体のかなり深く(恥骨あたり?)まで動いている感覚がする時があります。

何が起こっている状態なのか完全に理解できていないので、100発100中とはいきませんが、凄く心地よく吐けて、気持ちいいです!

こうやって、考えを整理して頂けると大変ありがたいです。

***
【バジル】
こんばんは。

>>支えは横隔膜で、吐くのは腹筋ということは、フォルテや、息にブレーキをかけず吹き込みたい時に、腹筋の使い方が、今までとかなり変わる気がします。


はい、そう思います!

>>そういった場面では、意識的に凹ませようとしていますか?それとも、凹んでいく感覚がある。くらいでしょうか?


試しにわざと思いっきり凹ませながら吹いてみてはどうでしょう?どんな息の出力ができて、どんな効果や作用や影響があるか実感できると思います。

>>フレーズの頭から喉の詰まりを感じることは、これでなくなりましたが、終わりの方や息がなくなってくるときに、また詰まりが出てきます。これは、どういった現象が起きているのでしょうか。


実際見てみたいところですが、これまでのやり取りから論理的に推測すると、これもやはり、吐く働き=体をしぼませる・凹ませる動きがそのときに止まっているか不足しているからだと思われます。詰まりを感じたら、すぐにわざとどこか凹ませてみるとどうなるでしょうか?

>>重心が上がってこないようにしようと意識していたので、骨盤が後傾することへ繋がったのかもしれません。


なるほど、あり得ると思います。

>>身体の重さが骨盤を通じて足に伝わることを理解すると、無理に重心が上がってこないように意識することがなくなり、自然に感じられます。


その通りです。空中浮遊の術を使っていない限り(笑)、体重は、床と足裏、背中と背もたれなど、『接触しているところ』に意思ではなく物理で伝わります。

>>拝見させて頂いたYouTubeの動画のなかに、骨盤を少し動かしてみてから吹いてみるものがありました。


ちなみにどの動画ですか?

>>そのウォーミングアップのあと吹いてみると、胴体のかなり深く(恥骨あたり?)まで動いている感覚がする時があります。何が起こっている状態なのか完全に理解できていないので、100発100中とはいきませんが、凄く心地よく吐けて、気持ちいいです!


良いですね!

***
【質問者】
こちらの、6:34〜のエクササイズです。

お気に入りに登録しちゃいました。

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【バジル】
なるほど!腹筋のウォームアップですね👍恥骨のところまで、腹筋ってあるんです。腹筋=吐く筋肉だから、吐きやすくなるというのも整合しますね。

BasilKritzer

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