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体にも音にもずっと相当に大変な力みや硬さがあったという生徒さん。
『音は唇が振動すること生まれる。唇は吐いた息が唇に当たることで振動する。だから、単純に息を唇に吐こう』
と意識し始めたら、力みが劇的に取れて行き始めた。
この出来事のミソは
『音が鳴る仕組みと、そこ現象を引き起こす方法を意識したこと』
にあり、変化は «その前まで意識していたことにより起きていたこと»との違いから生まれている。
それまで意識していたこととは、
・息をパンパンに吸う
・マウスパイプのむこうまで息を入れる
だった。
前者は、間違っていないが息をたくさん吐く意識とは葛藤する。流れ方を抑えて安定させるものだから。
後者は感覚やイメージであり実際にやれることではない。
そしてどちらも、『音が鳴る仕組み』に直接言及しないもの。
教えてくれた人は、その人自身にとっては有用あるいは重要である実感があったのだろう。
しかし、本人は実効性の確認をせずに『意識すべきこと、やるべきこと』として受け取った。教わったことだから、と。
何を考えるか?意識するか?
その入り口に姿勢とか重心とか丹田とか腹式呼吸とかを持ってくるより、教える側も教わる側も、音を生み出す仕組みや物理そのものあるいはそれを引き起こすごく単純で明快な、議論の余地もないくらい明白な事実・基本的操作から進めるのがとても良いのではないかと思った。
Basil Kritzer