吹奏楽部で後輩を教える先輩たちへ【理論と現実】

きょうはちょっと、抽象的でむずかしいお話をします。

まず結論から言います。


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教えるとき、こうしてみませんか?
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①後輩に、吹いてもらう
②それを見る・聴く
③『こうしてみて』という提案をする
④『どうだった?』と後輩に尋ねる
⑤3の結果あなたが思ったことと、4で後輩が思ったことをふまえて、3に戻る
⑥3→4→5→3→4→5….とくりかえしていく

これがわたしが今回提案したいことです。

これはつまり、《あまり説明をしない》ということでもあります。
 

【なぜ説明しないの?】

ひとは、考える生き物です。

「世界は、なぜこうなっているんだろう?」

ということを考えてばかりいたから、現在のものすごい科学があります。

この、「なぜ?」のところなのですが、楽器演奏に関しては実は科学的にまだよく分かっていないことがとても多いのです。

もちろん、楽器や音の物理に関してはいろいろと科学的に分かっていますが、吹き方に関してはまだまだ謎だらけです。

でも、科学的にはわかっていなくても、もう何百年も、楽器演奏の技術はひとからひとへと確かに受け渡されていっています。

ということは、「なぜかは分からないけれど、どうすればいいかは分かる」ことがたくさんあるんですね。

大昔の石器時代の人間は、石を打ったら火を起こせることや、火で炙れば生肉が美味しく安全に食べられることはよくわかっていました。でも、「なぜ?」は全然分からないのです。きっと、精霊のおかげと思っていたりしたのじゃないでしょうか。

このように、

「なぜ?」

ということを考えるのと、

「どうすれば?」

を考えるのって、

関わり合うことはあるけれど、実は別々のことなのです。

楽器演奏に関しては、さっきも言ったように「こうすれば良い結果が出る」というのがある程度分かっていることはたくさんありますし、あなたもあなた自身の経験からいくつか見つけているでしょう。

でも、それが正確になぜなのか?は、実はよく分からないことが多いのです。

【論理的でも正しいとは限らない】

そうは言っても、もちろんわたしたちは「なぜこうするとうまくいくのか?」を知りたいですし、考えもするでしょう。

深く考えていると、そのうちだんだん、理屈の通った説明が自分の中でできてくるようになります。

あるいは、すごく説得力のある説明にどこかで触れることもあるでしょう。

でも、直感的には分かりにくいことですが、どれだけ説明の筋が通っていて、いろんなことを見事説明しているように思えても、

その説明が正しいとは限らないのです。

さらに分かりにくいことをいまから述べます。

A「説明が正しく、効果や結果がでる」
B「説明が正しくなく、効果や結果がでる」
C「説明は正しいが、効果や結果がでない」
D「説明が正しくなく、効果や結果もでない」

このどれもが有り得ます。説明の正しさ・正しくなさと、効果や結果が出る出ないはイコールではないのです。

【説明より、効果・結果】

楽器演奏においては、

《より思い通りに、上手に演奏できる》
《楽しく演奏できる》

ことの助けになることを教えてあげたり、助けてあげるのが先輩や指導者が後輩のためにしてあげたいことです。

これが、さきほど述べた「効果や結果」のところですね。

それが先輩・指導者の役目なのです。

その役目のためには、「正しい・分かりやすい説明」をすることより「後輩や生徒さんの演奏が良くなり、後輩や生徒さんがもっと幸せに音楽できるようになる」ことを優先するとよいでしょう。

そうはいっても、「なぜなのか?」をわたしたちは考えるものです。それを考えるなと言っているのではありません。

でも、教えるときにやりがちなのは、説明を頑張ってしまって、相手の役に立つことをおざなりにしてしまうことです。

“正しい・分かりやすい説明をすること”
– – – – – -【区別】- – – – –
“後輩の演奏が良くなる提案をすること”


こうして、この二つのことを『別々のこと』として考えるようにしましょう。

その結果としての教え方は、最初に提示したように、
 

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教えるとき、こうしてみませんか?
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①後輩に、吹いてもらう
②それを見る・聴く
③『こうしてみて』という提案をする
④『どうだった?』と後輩に尋ねる
⑤3の結果あなたが思ったことと、4で後輩が思ったことをふまえて、3に戻る
⑥3→4→5→3→4→5….とくりかえしていく

という形になるのではないでしょうか。

もちろん、「なぜ?」ということについて考えて、より良い説明を考えていればいるほど、後輩にする提案がより効果的なものになりやすいのは確かです。

自分なりの知識、仮説、理論、あるいは勘を使っているからこそ、よりスピーディーにより役立つ可能性が高い提案ができます。

しかし、そこから先が大事です。

◎役立っているか?
◎どれくらい役立っているか?

という効果や結果を確認するのです。

いつもいつでも誰にでも最高の効果や結果が出るなんてことはありえないからこそ、

◎なぜあの人には役立ち、あのひとには役立たないのか?
◎あの人にもこの人にも役立つ提案はどうやって作れるだろう?

というところに考えが進み、もともと考えていたかもしれない「論理的に正しい、分かりやすい説明」を考え直し修正することができるようになります。

後輩や生徒さんには、その時点での分かりやすい説明を覚えて持って帰ってもらいたいのではなく、効果や結果の部分なのです。

Basil Kritzer

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