音を奏でる

呼吸しーフォーカスしてー音を奏でる

呼吸する

ひとが息を吸い、そして息を吐く。どちらのプロセスも楽器を演奏している間に機能している。(通常、息を吸うのは受動的である。ひとりでに起きるのだ)。

息を吸うとき、肺を満たしているのだと思い出そう。これは胴体の上部と下部を伸展させることで起きる。これにより肺に真空が生まれ(訳注:バキューム効果)、次に空気で満たされる。狙いは、肺を効率的でリラックスしたやり方で満たすことにある。
ゆっくり息を吸う事から始めて、胸郭(訳注:肋骨の作る空間)と胴体下部を拡げることで肺に空気を満たす(結果として横隔膜も平たくなる)。そこで少しの間だけ息を止める。観察して不必要な緊張は解放し(つまり、この過程で固めた筋肉で実際には呼吸に必要のないものはどれでも弛緩させる。例えば肩など)、リラックスして、そして息をリリースする。
ではこれを素早く繰り返してみよう。ひょっとすると、能動的に胸郭を伸展させるとそれが胴体下部の伸展を速めてくれて、もっと素早く肺に空気が満たされることに気が付くかもしれない。
効率的でリラックスした息の吸い方を目指そう。

楽器を演奏するとき、アンブシュアを通過する空気の流れはコントロールされる必要がある。バグパイプを想像してみて欲しい。バグパイプを鳴らすには、皮製の袋の部分が空気で満たされる必要がある。空気が満たされていく途中は、リードはひどい雑音を立てる。リードがちゃんとした音を鳴らすのに合致した空気の圧力が準備されていないからだ。袋の中の空気の圧力が正しいときのみ、リードの音は安定する。そういうわけで、袋は空気で満たされていて、リードを通る空気の圧力は演奏者によって袋にかけられる外圧によりコントロールされている。

それと似たように、私たちも肺を満たし、そして胴体下部の筋肉と肋間筋(肋骨同士の間の筋肉)を収縮させることで息の圧力を維持/増大/減少させてコントロールしている。息の圧力は、腹部の筋肉を外側に押すことで安定化させられる。内側にではない。腹筋の外向きの圧力は、胴体下部の筋肉や肋間筋の内側に向かう圧力をコントロールする助けとなり、これが「息の支え」と呼ばれるものである。

空気の圧力を保つ簡単な方法は、ベルトを使う事である。息を吸ったときに、胴体下部からベルトに対して押しているのが感じられるぐらいのきつさでベルトを締めておく必要がある。しかし、息を吸う邪魔になってはいけない。このベルトと腹部の「接触」を維持することで、つまりはベルトに対する腹筋の圧力を保つことで、息の支えが維持される(そしてベルトはヘルニアの予防してくれるかもしれない!)この支え、または「接触」は演奏する一瞬前に確立される必要があり。「フォーカス」の瞬間である。

肺の中の空気の量が減少するにつれて、肺と胸郭が収縮する。一方でその間、腹筋の「支え」は出来る限り維持されるべきだ。
バグパイプと違って私たち管楽器奏者の場合、音量や音程によってそれぞれ異なる息の圧力が必要だ(音程が高いほど、そして音量が大きいほど、息の圧力は大きい必要がある)。このコントロールは胴体の筋肉によって為される。腹筋は安定性を供給してくれる。バグパイプがそうであるように、適切な圧力とは小さ過ぎくも大き過ぎくもなく、アンブシュアを通過する息の流れを安定してコントロールすることを可能にするものだ。

フォーカスする

プロのダーツ選手を観察すると分かる事がある。ダーツの選手はまずボードの前で位置を定め、そしてリラックスし、ボードを見て、ボード上で狙う領域にフォーカスし、そこに注意を集中し、狙いを定め、そして投げる。そのとき彼のマインドは「いま・ここ」にある、つまり自分の内部(疑念など)でも外部でもあらゆる邪魔をを受け入れず、自分の仕事に一切の干渉を許さない。
というわけで、楽器の場合は奏でる音の音程を思い、リラックスし、その音程に自己の注意をフォーカスし(「心の耳」で望む音を聴く)、息を取り込み、支え、そして奏でる。

演奏する

起るに任せよう。「起るに『任せる』ことと『起こす』ことは別物だ」とティモシー・ゴールウェイも言っている。息も入って来ていて、フォーカスしたのだから、あとはただ奏でよう。それ以上の「でもやっぱりここで…」というような思考は集中を乱すだけであり、起るに『任せる』ことはできなくなる。そういう「ここでさらに?して…」というような思考に耳を傾けることは、手放して起るに任せるべき瞬間なのにまだコントロールしようとさせてしまう。手放す事は信頼が必要なのだ。信頼は受容から生まれるものである。

何をしたいか決めよう。それをどのように行うか決めよう。そしてただ行い、受け入れよう。

再びお勧めしたい:
ティモシー・ゴールウェイ著の「インナー・ゲーム」(原題 The Inner Game of Tennis)

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