また、「腹式呼吸」が演奏のさまざまな面を邪魔していたケースに出会いました。
その一部を描写すると、
息を吐くことを手伝えるはずの肩下げ効果のある筋肉を吸うときに使い
(肩を上げない意識)、
息を吐くことの主役たりうる腹筋を息を吸うときに力ませ、
(お腹に吸う、お腹で支える意識)、
その結果、吸いにくい吐きにくい状態に、というものです。
肩上げ筋は、実際のところ息吸いを手伝う効果があるので、息を吸うときに思いっきりわざと肩を上げることを提案しましま。
また、お腹をリラックスさせるためいったん身体を背もたれに預けてリラックスさせることも提案しました。
するとこれでいっぺんに状態が好転しました。
はじめはこれを「胸式呼吸」と言ってみたり、「脱腹式呼吸」と言ってみたりしましたが、最終的には
『息を吸うときに全身膨張、息を吐いて音を出すときに全身圧縮』
と形容してみたのが最も効果的かつ効率的でした!
全身圧縮、にシラブルやアンブシュアまでも包摂できて、大変パワフルかつシンプルになりました。
◎腹式呼吸が奏法をびっくりするほど阻害することがあること
◎脱腹式呼吸するだけで一気にいろんなことが整理され噛み合っていく様
◎まずはシンプルに膨張と圧縮と解するのが大変便利なこと
にまた改めて接したなあ、と。
腹式呼吸の意識による演奏のマイナスが起きていたのは、どうしてなのか?一般論ではなく当事者にとってそれは、
①教わったり見聞きした腹式呼吸をするかしないかどちらのほうがうまくいくかの比較検討をする機会がなかった
②腹式呼吸の意識か他の呼吸の意識、どちらのほうがうまくいくかの比較検討をする機会がなかった
③ある時点まで腹式呼吸が良かったが何かが変化していてそれ以降比較検討の機会がなかった
のいずれかということになるだろうと思います。
腹式呼吸・胸式呼吸問題は、
◎比較検討による自己選択
◎体の膨張と圧縮という空気の出入りの基本
にスッキリ解決の鍵があるのかもしれません。
Basil Kritzer