【なにもかもを、『唇』でやろうとしていた奏者の話】

〜奏法イメージの脱&再構築〜

いまレッスンに通っているホルン愛好家とのレッスンで、
どうもその方が演奏の全てを「唇」で考えているようだということが見えてくる場面がありました。

最初のレッスンで、その方のアンブシュアモーションを観察し、
意識的に把握して実行していくことに取り組みました。

その後、1〜2ヶ月で、グラグラガタガタと揺れていたアンブシュアはすごく安定し、
かなりストレスなく高音が出るようになりました

いま思うと、それは「音を上げたり下げたりする」方法が、「とにかく唇でやる」イメージになっていたのを、
アンブシュアモーションというアパチュア操作の実態・実際を捉えた考えに置き換えたというフェーズだったのだと思います。

先日のレッスンでは、どうも「構える」「振動を起こす」ことも全て『唇』で考え、『唇』でやろうとしていた面があるらしいことが分かってきました。

具体的には、楽器を構えている間、腕がすごく硬くなり辛そうになっていて、
マウスピースを顔面に対して安定的に保持するのにも苦労している面があったのです。

構える、というのはつまりマウスピースを顔面と接触させるということなのですが、
それをやる上で腕が動こうとしていませんでした。力は入っているのですが。

それで、「構える」というフェーズにおいても、唇のことだけ強くイメージしていて、
構えるという動作・運動を「する」つもりがなくなってしまっているのではないか?と考えました。

たまにありませんか?あることをやっていて、全然ちがうことを考えていて、考えている方の動作をしてしまうようなことを。
水の入ったコップを持っているのに、野球のことを考えて、スイングしてしまったことが私にはあります(笑)

そういう状況なのではないか、と推測しました。

そこで、

「楽器を眺める」

「自分の腕を眺める」

「この腕を使って、この楽器を動かして、マウスピースを口に持ってくる」と考えてもらう

ということをやってみました。

すると、楽器がひょいっと労せず持ち上がり、
さっきまでより随分素直にフッと音を鳴らせるようになりました。

続いて、「振動」についても同じようなことが起きていると思ったので、
「振動を起こすのは、何ですか?」と聞いてみると、やはり出てくるワードは唇にまつわるものばかりでした。

「息」あるいは「空気」に関係するワードが登場しないのです。

そこで、わたしのほうから「振動を起こすのは、息です」とお話して、
お腹をちょっとわざと凹ませながら「フーッ」と息を吐く動作をしてみていただきました。

そして、「振動」と声で言う、「フーッ」と吐く、
という動作を交互に何度かしていただきました。

楽器を演奏するなかでの「振動」に関するイメージを、唇から息に置き換える作業です。

「唇」の代わりに「腕と楽器を動かすこと」を考えて構え、
「唇」の代わりに、「息を能動的に吐くこと」を考えて振動を起こす。

そうすると、さらにラクに、より良い感じで楽器が鳴りました。

まだまだ、「唇」を何か別のものに置き換えるとよいポイントはありそうです。

たとえば、「ビート」つまり、「どのタイミングで音を出すか」ということや、「ソルフェージュ」つまり「どの高さの音を出すかをイメージすること」も、『唇』が占拠してしまっている可能性がありそうです。

それは、今後のレッスンで見ていきたいと思います。

Basil Kritzer

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