【曲への取り組み方】

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新訳:Singing on the Wind です。前回はこちら





【曲への取り組み方】

ここまでウォームアップ、技術的な練習、エチュードについて述べてきましたが、いま取り組んでいる曲と向き合う時間も十分取るべきです。ソロ、室内楽、オーケストラの曲、いずれも同様です。


練習の効率性は、練習の質に依ります。


フレミアの偉大な画家、ヤン・フェルメールは新たな画に取りかかる際、キャンバスに何か描き付け始める前に、描く対象についていろいろと研究をしました。

その次に、彼はキャンバス全体を一色で塗りつくします。この色は、描くことになる絵の基本的な背景色です。

それをしたうえで、赤色で下書きをし、絵の輪郭の基礎を作ります。

こうやって背景、基礎的な輪郭が描けてはじめて、彼は絵の細部や中身も描き始めるのでした。

この過程は、半年やそれ以上かかることもありました。

その間、彼は絵のディテールを、その作品にもっとも適したものになって彼が満足するまで変更し続けました。


これを音楽に置き換えると、新しい音楽作品の練習に取りかかる際は、それがモーツァルトの協奏曲であれなんらかのエチュードであれ、フェルメールと同じような態度で作品にアプローチするべきなのです。



実際に音を出して練習を始める前に、まずは譜面を見ます。

そこにある音楽的な中身と技術的な中身を見て、自分ならどのようにその作品を演奏したいかについて意見を生み出していきます。


・キャンバスの背景色は、ホルンで演奏する音の基本的な音質に相当します。偉大な音楽家の演奏を聴いていると、音の質の凝縮度が決して妥協されていないのが感じられます。音楽的表現はニュアンス、音量、アーティキュレーションによって生み出されますが、音の質はその間ずっと保たれています。

・そのため、わたしたちはまず第一に音の質を確かなものとする必要があるのです。これはわたしたちにとっての背景色であり、あらゆる表情記号や音量記号においても、自分が奏でられる最も美しい音で演奏するのです。奏でる全ての音をひとつひとつ充実した響き、オープンで美しい音で通して演奏するようにしましょう。

そうやって基本的な音の質、つまり背景色を確立したならば、これから描く作品に具体的なことを書き加え始めていくことができます。


リズムにおいては、メトロノームを使って自分を律するのが大切です。

どんな演奏家でも、技術的に難しいパッセージや、特に音楽的に中身の濃いパッセージを演奏するときにリズムに妥協します。これは、技術的な欠陥に依るものでなければ、何の問題もありません。

メトロノームは、わたしたち自身の技術的な原因からくるリズムの妥協に気づかせてくれ、そういった箇所をマスターすることを助けてくれます。

・まず、できればはっきり声を出して、メトロノームを使って各フレーズやパッセージをひとつひとつ歌ってみましょう。

・そのあとで、やはりメトロノームを使って、今度は同じ箇所をホルンで演奏しましょう。

その過程を踏んだうえで行うリズムの変化は、それがテンポに関してであれニュアンスに関してであれ、意図的なものになり、したがって音楽的にしっかりとしたものになり、わたしたち自身の解釈の一部となります。


こうして背景色と、作品の基本的な枠組みを確かなものにしたならば、ここかディテールを書き加えていくことを始められます。


ホルンを吹くとき、わたしたちは常にわたしたち自身の個人的な演奏能力によって一定の制限をされています。

だからこそ、実際に演奏する前にわたしたちは自らの音楽的な意図を分かっておくのが大切です。そうすることで、わたしたちは練習を、自らの音楽的な意図の具現化のために活用することができるからです。

・まず、あなたにできる限り美しく、ワンフレーズ目を歌いましょう。パヴァロッティみたいに上手でなくて構いません。目的は、あなた自身の音楽的な意図を確かなものにすることにあります。そのうえで、同じフレーズをホルンで演奏します。歌ったものと、ホルンで吹いたもの。そのふたつを比較しましょう。あなたが音楽的に意図した通りに、ホルンでそのフレーズを演奏しましたか?

・もしそうでなかったなら、あなたの望むとおりの聴こえ方になるように、まず声で歌い、イメージを向上させましょう。そのうえで、同じフレーズをホルンで演奏します。音量面でもっとニュアンスを凝らしてみた方が良さそうでしょうか?リズムはもっと正確であれたでしょうか?不明確になった音や、外した音はあったでしょうか?

・まず、ホルンで吹き直す前に、あなたの音楽的な意図を確かなものにするために、声で歌うことで修正をしましょう。フレーズを歌うことと奏でることを交替々々でやることは、アンブシュアに短いながらも重要な休憩を与えることにもなります。そうすることで、より長時間練習が可能になります。


この手順は手間がかかるように思えるかもしれませんが、実際にはずっと楽器を構えて吹きっぱなしで練習を続け、悪い結果ばかり上塗りすることより遥かに効率的です。



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続く
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