どのようなレッスンを行なっているか

この一年間、様々な奏法上の考え方に関するコラムや翻訳を掲載してきましたが、わたし自身がホルンやその他金管楽器のレッスンをどのようにおこなっているかを今回は少し紹介したいと思います。

一番大事にしてる事柄は、
「だれでも、やりたいことができる能力を持っているはずだ」というアイデアからレッスンをスタートすることです。

だから、まず「何がしたいか」をけっこうしつこく(笑)訊きます。

レッスンに来られる方のうち、すでに長く演奏を経験されている方は何らかの悩みを持っていることが多いです。
「?がうまくできない」「?がしっくりこない」「?はどうしたら出来るようになるか分からない」
そこはレッスンに来られる方自身が明確である場合が多いです。

ですので、その内容やご自身の考えている事を会話の中で注意深く聴いています。
その間に、ある種の考え方や思い込みが現実とマッチしておらず、それが能力の発揮を邪魔していることが分かる場合もあります。

往々にして、「できないこと」に意識が強く向けられており、そもそもの「したいこと」が不明確になっていることもあります。
今から奏する音のイメージ、心の耳で鳴っている音色、音量、音程、質感、あるいはホルンを吹く事の根本的な楽しみ、嬉しさetc…. それこそが、「やりたいこと」を実現する「ガイド」の役割をします。音を生み出すのは身体の動きですが、その動きの目的がはっきりしていないと、動きは組織立ったものになりません。言うなれば、ダーツの的を見ずに、外れた先の壁にばかり視線と気持ちを向けてダーツを投げようとしている状況です。これでは、うまくいきませんし、大変ですね。

そこで、こちらから「どういう音が出したいですか?」「どういう音楽ですか?」「どんな響きですか?」と状況に応じて質問を投げかける事で、本来その人の望む事自体に意識を向けていってもらいます。

また、話されている事のなかに誤解(呼吸やタンギングの仕組みと違うことを言っておられるとき、あるいは不明確な理解があるなと分かるとき)がある事に気付けば、それについて、その人に一番フィットすると思われる事例や比喩、解剖図などを見聞きしてもらい、頭の中をすっきりなるように持って行きます。

楽器経験の長い方なら、この時点で実際演奏してみるとかなり良くなることがしばしばあります。
また、何らかの前向きな感触が得られる場合もとても多いです。
つまり、必要な能力はすでに全て持っているようなものなのです。その能力が機能するように、思考や理解を明確にするプロセスを手伝わせてもらってる、そんなレッスンです。
レッスンの主役・経験の主体は、レッスンを受けられている方です。

初心者の方の場合も、基本は一緒です。
潜在的に、何でもできるはずだという観点から見るようにしています。
初心者の方の場合は、音や音楽についてのイメージの形成に二人三脚で取り組みます。一緒に吹いたり、僕が様々な音色を演奏した中から良いと思うものを選んでもらったり、音楽についての四方山話をしたりします。

また、経験者の方も初心者の方もどちらもレッスンの山場となる瞬間は、何と言っても「発見」の起きる瞬間です。

何かができたとき。 新しく音が鳴るようになったとき。 良い変化が起きたとき。 
意外な身体の動きに気が付いたとき。 無理してやっていたことを、やらなくてもよいと納得できたとき。

こういう瞬間は何にも代え難いもので、レッスンの楽しみの一番根本的なものの一つだと思います。
できれば、毎日楽器を吹くたびに発見のプロセスが起きると良いなあと思います。
そのために、レッスンを通して、観察・理解・実験の過程を体験してもらうように努めています。

もう一つポイントとなるのは、楽器を演奏する身体を、全体的な動きとして捉えるということです。

例えば、アンブシュア。アンブシュアについて「正しい・誤っている」という見方は一切しません。フォーム・型とは見なしていないのです。
 
その代わり、アンブシュアは、「望む音」を音を出そうとしたときに、全身運動である呼吸と、息が通る気管・口腔・咽頭・喉頭・舌・唇・顔全体、そしてマウスピースとホルンが、相互に関わり合い動き合うなかから見えてくる一つの状態と考えています。ですので、「アンブシュアの矯正」はやりません。

「思考」や身体全体の動き、ホルン演奏に使われる様々な身体の部位の色んな各要素に焦点を当てて一緒に取り組んで行く中で、いつの間にか「良い」と一般的に見なされているような「見た目」のアンブシュアになっていた、とうことが多くの方で起きています。

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