アレン・ヴィズッティに学ぶ、顎の位置と楽器の角度のシフト

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アメリカのトロンボーン奏者、David Wilken氏のウェブサイトより、記事Jaw Position/Horn Angle Changes and Guess the Embouchure Type – Allen Vizzutti」を翻訳しました。

〜アレン・ヴィズッティに学ぶ、顎の位置と楽器の角度のシフト〜

以下は、著名なトランペット奏者であるアレン・ヴィズッティがダブルタンギングによるオクターブを跳躍していく驚異的な演奏の動画である。

Allen Vizzutti – Double Staccato in octaves

【ヴィズッティに見る楽器の角度の変化と移動】

私が今回、言及したいのはヴィズッティがオクターブを移動するときに明らかに楽器の角度が変わっているのが分かることについてである。

音を上昇するとき:
楽器の角度を若干下げつつ、左に移動する

音を下降するとき:
その逆=楽器の角度を上げつつ、右に移動する

ことが明確に見て取れる。たくさん動いているように見えるが、彼が演奏している音域の広さを考慮すると、実はそれほどの動きではないのである。

彼がそれほど大きな跳躍が頻繁に使われない作品を演奏するときは、この動きはさほど目立たない。下記のビデオでは大きな跳躍の演奏と、楽器の角度の変化がさほど目だない演奏を両方見ることができる。

A.Vizzutti, Georg Solti Brass Ensemble A.Vizzutti:Fire Dance

【移動の軸と量】

ヴィズッティがここで見せている楽器の角度の変化や左右の移動は、それ自体がそのまま全ての奏者に同じように当てはまるわけではないことを明言しておきたい。

私自身を含む多くの奏者は、音を上昇するとき顎を若干前に持ってきて、ヴィズッティとは逆に楽器の角度を上げるようにして演奏するのがうまくいく。

また、ヴィズッティのように楽器の角度の変化の軸が斜めになっているのがうまくいく奏者もいれば、垂直な軸上を移動したほうがうまくいくという奏者もいる。

ここで重要なのは、

・軸自体は斜めであろうが垂直であろうが、移動そのものは大まかにまっすぐな軌道上で行われること

・オクターブごとの移動量・変化量はどのオクターブでもだいたい同じであること

である。

具体的にどうすればうまくいくかは奏者ごとに変わってくるし、また同じひとりの奏者にとっても発達に応じてうまくいく演奏法が変化もしてくる。

【アンブシュア動作と楽器の角度変化のちがい】

このような楽器の角度の変化を、多くの(もしかしたらほとんどの)金管楽器奏者は「ピボット」と形容するが、もともとこのピボットという言葉を浸透させたドナルド・ラインハルトが意味していたこととは異なる。

ラインハルトが意味した「ピボット」とは、金管楽器奏者たちが音域を移動するときに、歯と歯茎の面上をマウスピースと唇を一体的に上下にスライドさせていることを指して用いている。

私自身はこのスライド運動のことを「アンブシュア動作」と呼ぶことを好む。その方が混乱を招かないからだ

というのも、同じアンブシュア動作を行う奏者同士でも、音域の上昇や下降時の楽器の角度の変化は逆になることもあるからだ。

こういったことは、奏者ごとに非常に個人的であり得るため、一般化は簡単にできるものではない。

動画では、ヴィズッティのアンブシュアの様子が非常に分かりやすく写っている。

そこから推測するに彼のアンブシュアタイプは

『中高位置タイプ』

のアンブシュアである。(アンブシュアタイプについては「金管楽器の3つの基本アンブシュアタイプ」をご覧ください)

彼のマウスピースの当て方として、マウスピースの中では上唇の方が下唇より多くなっており、それが下方流方向の奏者たらしめている。下方流方向タイプには、超高位置と中高位置の二つのタイプがある。(詳しくは『息の流れの方向と金管のアンブシュア』をご覧ください)

アンブシュア動作の様子もかなりはっきり映っている。どんな動作かというと、

・音を上昇するとき:
アンブシュアとマウスピースを一体的に下方向へ動かす

・音を下降するとき:
アンブシュアとマウスピースを一体的に上方向へ動かす

というものである。この動作パターンは、中高位置アンブシュアタイプの奏者において典型的である。(ただし、普遍的ではない)。

(翻訳:Basil Kritzer)

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