オーバーブローがどうしても直せない。息のコントロールはどうやってやればいいの?

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自己否定がこんなに自分を締め付けていたとは….!!
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高校生のサックス吹きからメールで質問を頂きました。

【質問者】

高校でテナーサックスを吹いています。

最近、頑張って息を吐いてもなかなか楽器が鳴らず、pで吹くときは音が極度に出しづらいような状態が続いていました。

そしてそれは、どうやら口や特に喉に力を入れることで、汚い音が出ないようにと無意識的に息をコントロールしていたことが原因のようだと気づきました。

そのコントロール無しではオーバーブローしてしまうということだと思うので、やはり口や喉以外で息をコントロールできるようになる必要があると考えました。

しかし、息のコントロールを、体のどこをどのように使ってするのかがなかなか感覚が分からないので、どうしても喉に力がはいってしまいます。

息のコントロールのしかたやそのイメージを教えて下さい!

【バジル】

メールを頂き、ありがとうございます。

文章から、「汚い音になってしまわないように….」という否定的で息苦しい考えで楽器を吹こうとすると

・口や喉に邪魔な力みを自分で作り出し
・息が吐きにくくなり
・とくに小さい音で苦労する

という結果につながっていることがとてもわかりやすく現れていますね。

「否定的で息苦しい考えで何かをやろうとすると、こういう結果になることがあるんだ」

ということを、ぜひ大切な学びにしてください。

また、同じことなのですが、別の角度からもうひとつ大切なことが学び取れます。

現状、オーバーブローな吹き方以外に、どうやって演奏したらいいかが分からない、ということですね。

だから、とりあえずなんとかそれを抑えている。オーバーブローを抑えること自体には成功しているのは分かりますか?

そのやり方が、

・否定的で息苦しい考えに基づいている
・口や喉の力みを生み出している

という面があるのでもっと良い考え方やり方を探したいのは確かですが、力みが伴ってはいるにしても、とりあえずオーバーブローを抑えることはできている、ということをぜひ前向きに感じ取ってほしいな、と思います。

英語で、 celebrate = 祝う、祝福する という言葉があるのですが、オーバーブローを抑えられているという点は celebrate に値することです。ぜひ celebrate してください。英語では、こういうときにこういう文脈で実際に使いますので、日本的には不慣れでしょうが、取り入れていくことはとても為になります。

さて、オーバーブローになりがちな傾向から、勢いよく吐く以外にも多様な息のコントロールを学びたいわけですが、手始めに次のことをやってみてください。

1:鼻からゆっくり息を吸います。
2:口から「フ~」とゆっくり吐きます。
3:また鼻からゆっくり息を吸い、口から「フー」とゆっくり吐きます。
4:数回それをして息が落ち着いてきたら、鼻からゆっくり息を吸っているときの肋骨の動きを観察したり感じたりします。
5:すると、息を吸うにつれて肋骨が動き、肋骨が広がったり持ち上がってきたりするのがわかると思います。
6:その実感が得られたら、次にゆっくり鼻から息を吸った後に3秒ほど、息を吐くのを待ちます。
7:すると、吸った状態を保つ感覚を感じられると思います。何回かやったり、保つ時間を長めにしたりして、 吸った状態をキープする感覚を体験してください。
8:こんどは、鼻からゆっくり吸い、吸った状態を3秒ほどキープしたら、無理のない範囲でその吸った状態をキープしながら息を吐きます。
9:うまくいけばこの時点で、息は一気に出ていかず、コントロールされた流れ出し方になると思います。
10;最後に、この吐き方で楽器を吹きます。息を吸い、吸った状態をキープしながら音を出します。

これをやってみて、どう変わるか、何か腑に落ちることがあるか、あるいはうまくいかないことや分からないことなどを、ぜひすぐお返事ください。

【質問者】

お返事ありがとうございます。

先生のご指摘で、知らぬ間に自己否定をして自らの首を絞めていたこと、そうしてしまうことのもったいなさに気付くことができました!思考を変えたことで、音に余裕ができて伸びるようになりました。だいぶ首も楽にしながら吹けるようになりました。

息を吸った状態を保っているとき肋骨が動いて肺が膨らんだままになる感覚はわかりました。

今まで喉で息の量をコントロールしていた力を、胸の方に移したような感覚がありました。息の量は少ないままで綺麗に音が立ち上がるようになりました!

また、改めて楽器を吹いていて、吹く直前から喉が思い切り開いてしまっている感覚がありました。

このことについて、よく「歌うように吹け」と言われることがあって、歌うように吹こうとすると喉が開くような気がします。

そのせいか、ピッチも全体的に低くなっていました。

これを治したいのですが、基礎練習では大丈夫ですが曲を吹こうとするとやはり開いてしまいます。

なにか改善策はありますでしょうか?

【バジル】

呼吸のコントロールに早速効果があって何よりです!

>>吹く直前から喉が思い切り開いてしまっている感覚がありました。このことについて、よく「歌うように吹け」と言われることがあって、歌うように吹こうとすると喉が開くような気がします。そのせいか、ピッチも全体的に低くなっていました。

とてもよくあることです。
わたしもほとんど同じようなことを経験しましたし、多くのひとが経験しています。

ニューヨーク・フィルの二番ホルン奏者のアレン・スパンジャーさん(彼もアレクサンダー・テクニークの先生です)もこのことを話していました。

彼の学生時代、アメリカの金管楽器界は「音を太く!暗く!」という嗜好がすごく流行しており、彼も一生懸命喉を開けようとしていたと。その結果、音はモソモソし、音程がいつも低く、高音域はとてもしんどくなっていたとのことです。

喉を開けようとする/口の中を広げようとする、ということの罠に気がついたのは大学を出てアレクサンダー・テクニークや発声を学んでからとのことでした。

>>これを治したいのですが、基礎練習では大丈夫ですが曲を吹こうとするとやはり開いてしまいます。

二つ試してみてほしいことがあります。

①「喉はどれだけ狭くてもいい、開いていてもいい、どんなふうに動いたっていい。わたしが奏でたい音を奏でよう」と意識して曲を演奏する

② 開けようとしている場所を喉や、口の下側(ベロの奥)、アゴにしていると思うのですが、そこに対しては「きみたちは閉じるのも含めて必要な動きをいくらでもやってくれ」と思いつつ、『口の天井の奥の方の柔らかいエリアが上に行く』と思って演奏してみる

それぞれどんな効果がありますか?

– – -数日後- – –

【質問者】

先生の仰った二つの意識でここ数日吹いてみました。

喉や口はどう動いてもいいと意識しながら吹くと、それだけで息が素直にでるようになりました。

しかし自分の望む音色を出そうとすると、やはり力が入ってしまいました。どうやら「いい音=口や喉が開く」という式が強くからだに叩き込まれているようです。

なので、息の量だって少なくていい、音が出なくてもいい、汚くなってもいい、だからとにかく自分の自然なブレスをしようと意識したところ、物凄く音が出やすくなりました!!

とっても楽なのに、アタックも明確になり、ダイナミクスレンジもだいぶ広がりました。ピッチも少しうわずる位になって感動しました(笑)

口や喉はだいぶ閉じました。周囲の人に音を聴いてもらうと、少々軽くはなってしまったものの、響きが断然良くなったと言われました。

一つひとつの小さな進歩でも、見つけて自分を褒めてあげることで、すっとからだも楽になるのが分かりました。自己否定がこんなにからだを締め付けていたとは思いませんでした。

先生の仰る、少々不安定な感じも得られています。こんなに楽に音が出てしまっていいのかとびっくりしました。まずはこの感覚に慣れて、それができてから音をさらに磨いていこうと思います。

楽に音楽にも入っていけるようになって、とても嬉しいです。辛くても諦めないで良かったです。

先生に質問して、本当に良かったです!!ありがとうございます!!

【バジル】

素晴らしい素晴らしい!
おめでとうございます (^^)

何より、アイデアを自分で応用・アレンジできたことが素晴らしいです。
しかも、その効果がオリジナルよりさらにすごかったということ。

まさに「自分のものになった」ということです。

Basil Kritzer

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