『音楽によって価値を提供する』仕事論vol.2

【呪いや罵声は相手にするな】

音楽家は貧乏でないといけない

という思い込みや呪いに負けてはいけません。

なぜか?

音楽家が貧乏であるということは、それはこの社会に音楽が提供されていないこととほぼ同義であり、それは世界にとって不健康だからです。

「音楽」という素敵なことで、しかも好きなことで生活を成り立たせることができているひとに対して、自分の好きなことを突き詰めなかったひとからの強い妬み僻みからくる呪いです。

だから、本気にしちゃいけない。相手にしちゃいけない。

【お金を受け取る】

この世の中では、価値に対してお金というエネルギーが流入します。

ですから、生計を立てる=お金のエネルギーを受け取るためには、

・音楽の価値を明らかにし
・それを提供し
・その結果流れ込むお金のエネルギーを受け入れる

ことが必要です。

【常識や慣れでなく、原理原則で発想する】

音楽の価値は何なのか?
音楽の価値によって他者に与えることができるものは何なのか?
音楽によってどのような金銭的利益を他者にもたらすことができるのか?

この問いを探求し続けることから、「仕事」にするためのアイデアや糸口が見つかってきます。

原理原則で考えるということは、原理原則を現実に当てはめた際に、まったく予想外の現実を見つけることがあることを意味しています。

その意味で、原理原則で考えるということは実は常識的思考でなく、結果的に常識外、予想外、創造的な発想をもたらすのです。

〜ピアノとサクソフォンのデュオ〜

きょうは、「ピアノとサクソフォンのデュオ」が、そのデュオの演奏によりどうやってお金のエネルギーを受け取ることができるか、「発想の練習」をしてみましょう。

デュオの演奏が、どのような価値を提供することができるか、考えてみましょう。

【聴衆を獲得する】

まずは、デュオの生み出す音楽の価値が発生するためには、その演奏がひと(聴衆)に届く必要があります。

音楽は

・演奏者
・聴衆
・演奏空間
・作品

がそろって初めて成り立ちます。ですから、聴衆がいないとそもそも音楽は音楽たりえないのです。

ですから、デュオはまず最初に「聴衆」を獲得する必要があります。

聴衆の獲得方法。これはもう、非常に古典的なマーケティングの課題であり、

ユーザー
クライアント
お客さん
読者
etc…

さまざまな「名称」で同じテーマが各業界において永遠のテーマとなっています。

ということは、「聴衆」の獲得方法の原理原則は、はるか昔から(上記の異なる言葉で)世界各国で活発に研究され、実験され、実践されてきているのです。

つまり、原理原則で読み取り、理解し、演奏の世界の感覚的常識や呪いに囚われずに現実に当てはめて考えれば、聴衆の獲得方法を教えてくれる本やコース、指導者は無数にあるのです。

日本語の本で導入として最も分かりやすいのは、神田昌典さんという方の著作や訳書かなと思います。非常にたくさんありますから、題名や書評を見てピンときたものから読むとよいでしょう。

聴衆の獲得方法という古典的なテーマに関しては、このブログのシリーズでも今後掘り下げて扱うことになると思いますが、きょうは「発想の練習」を大事にしたいので、

「とにかくラクして聴衆を獲得する」

ことに創造性と想像力を働かせてみましょう。

とにかくラクする最高の方法はなにか?

それは、「誰かから聴衆をもらう」ことです。

・いったいどこにいけば、すでに聴衆が集まっているでしょうか?
・いったい誰が、そのような聴衆を集めてくれているのでしょうか?
・いったい誰が、そのような聴衆を、デュオに与えてくれるでしょうか?

答えは無数にあります。

大事なのは、正解を探すことや、間違いを避けようすることでなく、この問いに沿ってあなた自身の想像力や観察力を働かせることです。

【音楽の力で付加価値を与える】

わたしはホルン奏者ですから、「ピアノとサックスのデュオ」はやりません。また、演奏活動を仕事にしているわけではありませんから、このようなデュオをやることもないでしょう。

しかしながら、この問いに対する答えを、わたしも自分の想像と観察から色々と導きだすことはできます。

たとえば

「フランス料理店で演奏付きのディナーイベント」

というのはどうでしょう。

このようなモデルを想像してみましょう。

〜フランス各地のワインを味わいながら、季節のお料理をピアノとサクソフォンのデュオと共に〜

・XXXX年️️月△△日 19:00より
・先着20組様限定, 事前予約
・1組2名様より〜 コース料理(ワインテイスティング込み)一名様 \5,900

さあ、なんとなくイメージが分かってきたでしょうか?

ポイント1:
あなたのデュオは、フランスの作品でプログラムを構成します。工夫をして、フランス各地の作曲家、またはフランス各地の土地にちなんだ曲を盛り込むのです。その土地のワインを、そのタイミングでレストラン側はお客さんに提供します。あなたは、曲の由来、聴きどころ、その地方の特色などを工夫して調べ、魅力的な「曲目紹介」を語ります。そうすることで、お客さんは出されたワインの味と、その土地や曲のストーリーを重ねて味わい、とても楽しい時間が演出されます。それはそのレストラン単体では生み出すことが不可能な価値です。つまりあなたの音楽がそのレストランに付加価値を与えることになるのです。

ポイント2:
もしそのレストランが基本的に集客するためのメカニズムを持っていれば、聴衆はレストランが連れてきてくれます。あなたが提供しているのは、普通の意味での集客効果ではなく、

・そのイベントだからこそ来客する新規のお客さん
・音楽のイベントだからこそ来る特定のタイプのお客さん

を呼び寄せる力なのです。これはレストラン側が持っている力ではなく、音楽が持っている力なのです。

ポイント3:
音楽の演奏が聴けるということで、レストラン側は普段のコース料理に上乗せをした額の料金を設定することができます。そうすることで、レストランには、よりお金を使うことができるお客さんが来ることになります。そのお客さんがリピーターとして定着すれば、顧客単価が上がりレストランの収益が高まるのです。つまり、音楽の力がレストランにとってのより良いお客さんを呼び寄せた、ということになるのです。

ポイント4:
各地のワインのテイスティングというイベントを音楽の構成と重ね合わせたことで、レストラン側としては「味見をしてもらう」という宣伝活動をごく自然に行うことができます。レストラン側としては個々のお客さんの反応を記録しておけば、同じお客さんがまた来た際に、そのひとの好みに合ったワインをおすすめするなど、サービスの質を個別のお客さんに最適化して顧客満足度を上げることができるのです。音楽の力があったからこそ、お客さんに関してのより深く新しく大切な情報を引き出すことができるのです。

【応用編】

ちょっとこうして考えただけで、音楽の演奏がレストランに対してたくさんの貴重な価値や情報をもたらすことができるのがわかります。もっと厳密に考えれば、もっとたくさんの「付加価値」を見出すことができるでしょう。

また、応用編ですが

・あなたや、あなたのデュオに知名度や熱心なファンがあれば、レストランに対して純粋な集客力を与えることができます。あなたがレストランにお客さんを連れてくることがあなたの音楽の「価値」になり得ます。

・よく調べると、まったくことなる店名や系統のレストランでも、同じ会社によって経営されている場合があります。そうであれば、レストランでなくその運営会社にコンサート企画をそのメリットを中心に提案・アピールすれば、その運営会社が経営する複数のレストランで同じことができる=いっぺんにたくさんの仕事を得ることができる可能性があります。

音楽は、ひとを引き寄せます。そしてひとをとても幸福な気分にさせます。これはあらゆるビジネスにとって非常に価値の高い力なのです。

それを提供することができるあなたは、お金の面で規模がはるかに大きい異業種に対して働きかければ、音楽で仕事ができるチャンスがぐっと高まるわけです。

【あなたはいくらもらうべきか?】

さきほどフランス料理店のイベントで、レストラン側の売り上げはいくらだったでしょうか?

2名20組が来客したとして、\5,900×40=\236,000 です。

ではあなたのデュオはここから謝礼としていくらもらうべきか?

考え方はいろいろですが、レストラン側の経営感覚の鋭さによっては全部受け取ってもよいくらいなのです。

なぜか?

それは、あなたが音楽で生活しているのに対して、レストランはリピーター顧客により成り立っているからです。

レストランも、その他おおくの業種も、実はリピーターが収益の大きな部分を占めています。ですから、

・新規顧客をもたらし
・特定のタイプの顧客を新たにもたらし
・よりお金を使えるお客さんを呼び寄せ
・サービスの質を上げる情報を与えた

そんなあなたの音楽の力は、レストランにとっては「長期的な価値」があるのです。

ですから、レストラン側にとってはそのイベントのあなたへの謝礼の支払いによりその日はいくらか赤字になっても、とても有効な投資だと判断すればそれでちっとも痛くもかゆくもなく、むしろ何度もやってほしいものなのです。

ここでわたしは特定の額を推奨するつもりはありません。レストランの状況によっても時と場合によりけりでしょう。

私が強調しているのは、「こんなに価値を持ちうるものなんですよ」ということであり、それが多くの音楽に仕事で従事するひとがすっかり見落としていることなのです。

大切なのは、「あなたが望むような生活をしていける額」をいただくことです。なぜなら、望むような生活ができないと、あなたはいつか音楽を仕事にすることをやめてしまうから。

あなたが音楽を仕事にすることをやめてしまうと、その分だけレストラン側あるいはその他の業界に対しあなたの音楽が生み出し与える価値がなくなってしまうことを意味しています。

そしてもちろん、この世界から音楽がまたひとつ減ってしまうことも意味しているのです。

あなたが生活していける額をちゃんと受け取ることは、この社会のためでもあり、また他の様々な業種、業界、サービスのためでもあるのです。

【時代錯誤で無責任な慣習に毒されてはいけない】

わたしは気にしたことがなかったのですが、最近、

「師匠や先輩より高い演奏料を受け取ることはできない」

という悩みがあることを知りました。

これは時代錯誤な話です。

あなたの演奏にいくら払うかを決めるのは、聴衆やあなたの音楽の力を欲する側であり、演奏家仲間や同業者ではありません。

昔ならいざしらず、いまはこのようなしがらみはもはや根拠がない感覚的なものであり、法律的にも問題があるかもしれない「圧力」のようなものです。

昔はそれによってみんなが守られ、良い意味での年功序列が機能してだんだんちゃんと潤うようになっていたのかもしれませんが、もはやそのような時代情勢ではありません。

繰り返しますが、あなたが生活できないと、それは世の中にとって損失なのです。

師匠や先輩は嫉妬やなんとなくの感覚で嫌がるだけであり、あなたの生活や未来に対して責任を負ってくれるわけではありませんよね。

ですから、無責任な慣習に毒されてしまわずに、あなた自身の未来を設計してください。

そしてあなたが師匠や先輩の立場になったら、昔自分が受けたような圧力をかけるようなことはせず、むしろあなたの仕事のノウハウを積極的に伝授していきましょう。

それがとりもなおさず、音楽のためであり、社会のためにもなるのです。

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仕事論 vo.1 『音楽の世界にもっとお金のエネルギーが流れてきますように』

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