習慣的なやり方・反応を「しない」

楽器を演奏しているなかで、いつもいつもほとんど同じような動きと感覚と力の入れ具合で音を出したり、楽器を動かしたり、イスに座ったりしていると思います。

これが「習慣」です。

「習慣」自体は良くも悪くもありません。
脳における神経学的回路から形成される動きのパターンです。

このパターンが無意識的に繰り返し選択されると、「考えなくても出来る」ようになっていくので、習慣はとても役に立つものでもあります。

ただし、学んで身につけてきたある習慣に、「やりすぎ」があったら…。
その習慣が、いま現在においては「不合理」なものであったら…。
身につけた習慣が、やりたいことの邪魔をするものでったら…。

こういうときに、「習慣をやめる」必要があります。

それをするには、習慣を認識し、意識的に「しない」ことを選択する必要があります。

ホルン演奏においての具体例を考えて行く前に、この『「しない」という選択』について少し長くなりますが引用したいと思います。『「しない」という選択』をアレクサンダー・テクニークでは「抑制」と言います。

では「抑制」について、ジェレミー・チャンス著、片桐ユズル訳 『ひとりでできるアレクサンダー・テクニーク』誠信書房刊から引用します。

………筋肉を抑制という意味でわかっていてほしいことは、これはある種の運動ニューロンの積極的な生物学的な働きであるということです。これは精神分析でいう「抑圧」とはまったく別物です。………興奮と抑制の二つの術語は生理学者が運動ニューロンのはたらきを記述するときに使うことばであり、わたしたちの運動系の本質的要素のひとつです。抑制が発見されるまで生理学者たちは運動ニューロンはただ筋肉を興奮させ収縮が起こるのだと考えていました。筋肉収縮の抑制を専門とする運動ニューロンの発見は革命的だったのです。………アレクサンダーが…(注:それ以前に自身の経験を通して)発見していたことは、もし1セットの反応を抑制できれば、新しい協調作用が解除され、はたらきはじめることでした。それ以外のやり方はかならず、抑制されない古いセットの上に、もうひとつの収縮を積み上げるだけなのです。…………「すでに知っていることをくりかえしているかぎり、未知のことをできるはずない」(アレクサンダー)…………最初にあなたが発見するのは、あなたが習慣的に自分にあたえてきた(注:やり方、動き方、考え方という意味での)方向性です。その後でそれらを抑制し、その代わりに新しい…(注:建設的・意識的な)方向性を(注:考えるという意味で)あたえます。(

では、ホルンの演奏という面で具体的に見ていきましょう。

まず必要なのは観察です。
観察には感覚を使います。

筋感覚
どこにどれだけ力を入れているか、どのように自分は動いているか、どのような姿勢をとっているのかに気づくことができます。

視覚
鏡を使って自分がなにをしているか見ることができます。また、自分の眼に習慣的にどのように周りが見えているか、視野のどのあたりまで意識に入っているかも気づくことができます。

聴覚
音という「やっていることの結果の一部」を客観的に知ることができます。また、どのように普段音が聴こえているか、左右上下で注意の度合いに違いがあるか、それも気づくことができます。

触覚
ホルンと手、マウスピースと唇、舌と歯、床と足、お尻とイス etc
こういった様々な物事において、接触を通して温度・角度・圧力の度合いや変化に気づくことができます。

味覚・嗅覚はホルン演奏にそれほど関わるものではないでしょうが、外界と自分自身の情報を集める役割を常に担っています。

思考
これは聴覚または視覚に近いかもしれませんが、自分がホルン演奏時に何をどのようにどんな言葉を使って考えているか、イメージしているか、それも気づくことができます。

このようにして、自分自身とその周囲についての情報集めるうちに、「自分自身のやり方」が見えてくると思います。あるいはすでに、習慣的なクセに以前から気が付いている人もいるでしょう。

それが「習慣」です。

改善・変化・成長のためには、「習慣」と別の事が起きる必要がありますよね。
変化とはつまり、未知へ一歩動くことに他なりません。

ですので、自分で気づいた「自分のやっていること=習慣」に「NO」と考えます。
習慣に「NO」と考えつつ、「ホルンを演奏する」などの望む行動に「YES」と考えます。

そうすることで、習慣的なやり方が「抑制」され、それとは異なる新しい動きの形成が為される可能性が生まれます。

これが「意識的に練習する」ということではないでしょうか。
脳を使ってる、とも言えるかもしれません。

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